「リブラ」はなぜ警戒される? 匿名性と金融政策無効を懸念、米国が間接規制する恐れも(高橋洋一 日本の解き方)

2019.7.24
G7財務省・中央銀行総裁会議で集合写真を撮る麻生太郎財務相=17日、フランス・シャンティイ(ロイター)
先進7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議で、米フェイスブックが計画する暗号資産(仮想通貨)「リブラ」の影響力への「重大な懸念」を共有、規制を含む対策を早急に策定することで一致したという。リブラはなぜ各国に警戒されているのか。
暗号資産を各国が警戒するのは、「通貨」に酷似しているからだ。
「通貨」とは、これまで主として国家が発行主体になる現金通貨だった。もっとも、経済学では「通貨」には、現金通貨のほか、銀行が発行する預金を加えている。預金通貨の中では、当座預金が現金通貨とほぼ代替的であるが、普通預金や定期預金になると現金通貨から遠くなる。
金本位制の時代には、現金通貨は金(ゴールド)が裏付けだった。これをバランスシート(貸借対照表)で見ると、「資産」に金があり、「負債」の現金通貨とバランスしている。今の管理通貨制度でも資産は金ではないものの、この見方を適用できる。
現在、銀行の預金通貨の裏付けは貸出資産や有価証券であるが、そのバランスシートをみれば分かるし、その健全性は銀行検査によって担保されている。
ただ、「通貨」の所有者の特定は異なる。国家発行の現金通貨では所有者は特定されず匿名性を持つが、銀行発行の預金通貨では所有者は本人確認される。匿名性は現金通貨の特権だといえる。
暗号資産は民間企業発行なのに、銀行規制が及ばない。しかも、所有者は基本的に特定されない匿名性がある。この意味で、暗号通貨は国家発行の現金通貨と同じ性格を持ち、国家を超えうるので、国は本能的に警戒するわけだ。
問題となるのは、匿名性と、各国の金融政策を無効化するという懸念だ。これらは、従来の各国ごとの規制では全く歯が立たない。
そこでG7のような多国間協議になるのだが、「リブラ」の発行元はフェイスブックという米国企業なので、米国がどのように規制にするのかが気にかかる。
トランプ米大統領も米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長も口をそろえて同社を最高水準で規制しようとするが、「リブラ」は国家を超えるので、米国が他国を間接的に規制することと同じになる。そのため、他国も納得できる規制が必要だ。
米国の法律は域外適用されることもしばしばあるが、それは避けなければいけない。そうでなくても暗号資産のために、各国の金融システムや金融政策は大きな影響を受ける。その場合、各国は米国にどのようなことを言えるのか。各国の通貨主権が侵されないのか。各国の金融取引課税はどうなるのか。トービン税(通貨取引税)構想のように同時課税するのかどうか-。ざっと考えても難問山積だ。少なくとも暗号資産の導入の是非について、各国の権限による留保は必要だ。米国は各国の意思を尊重して規制を行わなければいけない。
(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)
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