日本生産性本部が19日に発表した2021年の労働生産性の国際比較によると、日本は経済協力開発機構(OECD)加盟38カ国中27位で、比較可能な1970年以降最低を記録したという。
労働生産性とは何か。OECDでは、就業者1人当たり、あるいは就業1時間当たりの成果として計算している。成果については付加価値(国レベルでは国内総生産=GDP=をドル換算)としている。ドル換算としては、為替レートと、短期的な為替レートの変動を除去した購買力平価がある。この定義式を見ると分かるが、労働生産性は1人当たりGDPとかなり類似した概念である。
GDPは実質か名目か、さらにドル換算の場合、購買力平価にするか為替レートにするかで差異はあるが、これまでの1人当たりGDPのOECD加盟国中の日本の順位を見てみよう。ただし、過去にOECD非加盟だった国も加盟しているものとして計算する。
1980年から2020年まで10年ごとの日本の順位について、まず名目GDPでドル換算を為替レートとすると、1980年が27位、90年が12位、2000年が2位、10年が13位、20年が19位だ。実質GDPでドル換算を購買力平価とすると、1980年が28位、90年が15位、2000年が19位、10年が19位、20年が17位となる。
マスコミでしばしば話題になるのが、名目GDPを為替レートでドル換算した日本の順位だ。1990年以降、円高だったので、かなり上がっていた。デフレで経済成長が鈍化し始めたのが90年代後半なので、その影響がまだ出にくかったのだ。
しかし、2000年以降、つるべ落としのように順位を下げていった。実質GDPを購買力平価でドル換算した順位を見ると、同じ傾向ではあるが、それほど順位の変動は大きくない。
さて、労働生産性について、実質GDPでドル換算を購買力平価としてみると、日本の順位は1980年が33位、90年が28位、2000年が19位、10年が19位、20年が21位だ。
以上の統計から、生産性本部の発表を見るとどうであろうか。1970年以降最低というが、70年のOECD加盟国は21カ国、2021年は38カ国なので、両者で日本の順位を比較するのはミスリーディングだ。
筆者のデータも1995年以前はデータ欠落があるのであまり信頼できないが、95年以降でみると、GDPが伸びなかった分だけ、1人当たりGDPや労働生産性で日本は順位を下げているのが確認できる。
要するに労働生産性といっても、本質は1人当たりGDP、ひいては90年半ば以降のデフレに伴う「失われた20年」によってGDPが伸びていないということだ。これについては、日本のマネー不足が原因だと思っている。90年代以前、日本のマネーの伸びは先進国で平均的だったが、それ以降は世界でビリになったのが最大の要因で、マクロ政策の緊縮財政と金融引き締めによるものだ。
労働生産性というとミクロ対策が想起されるが、本質は適切なマクロ政策に尽きる。
(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)
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