朝日新聞、部数急減でも経営はV字回復 社内では「不動産で儲ければいい」の声

2022.11.01 週刊ポスト
2012年、大阪・中之島にある大阪本社を建て替え2棟建ての超高層ビルに(写真/共同通信社)
かつて、日本を代表する「クオリティ・ペーパー」として隆盛を誇った朝日新聞の凋落が止まらない。発行部数は全盛期の半分に落ち込んだ。なぜ“天下の朝日”はここまで落ちぶれたのか。
【前後編の後編】
言論機関として腰砕けになったとOBから指摘される朝日だが、この間、“宿敵”の安倍晋三元首相への追及姿勢は続いた。
両者の遺恨は2005年の「NHK番組改変問題」に遡る。当時、自民党幹事長代理だった安倍氏が、放送前の番組に政治介入したと朝日は報じた(安倍氏は「捏造」と主張)。以来、朝日は小泉純一郎首相(当時)の後釜に安倍氏のライバルだった福田康夫氏を推す論陣を張るなど、「反安倍が社是」と揶揄された。
近年、いわゆる「モリ・カケ問題(森友学園への国有地売却や、友人が理事長を務める加計学園の学部新設に便宜を図った疑惑)」で安倍氏を追及してきたが、尻すぼみ感は否めない。
安倍氏は、2018年2月、国会で朝日の過去の誤報を列挙し、NHKへの政治介入報道などについて「間違っていたと一度も書かない。私に一度も謝らない」と皮肉った。
近年の部数急減に対し、こんな見方もある。立教大学名誉教授(メディア法)の服部孝章氏が語る。
「安倍政治を検証して批判するのが朝日に期待される役割だったはずが、若者や中高年にもリベラルな論調を嫌う傾向が強まると、朝日もそれまでのスタイルを弱めた。私は朝日がリベラル色を薄めたことが、部数減に繋がったと見ています」
近年の朝日に顕著な「言行不一致」を問題視する声も多い。昨年、朝日は「27年7か月ぶり」の購読料値上げを実施した。思い出してほしい。
朝日は民主党政権時代、消費増税の必要性を訴え続けてきた。にもかかわらず、2019年の消費税率引き上げ時は政治に働きかけ新聞への軽減税率適用を勝ち取った。直後、朝日は「新聞は公共財」と胸を張り、「購読料はこれまで通りといたします」と断言。それからわずか2年後の値上げは、「自身は軽減の恩恵に与り読者に負担を強いる」ご都合主義ではないか。朝日新聞元編集委員の落合博実氏が指摘する。
「朝日に期待していた読者も『さんざん消費増税を煽っていながら何ごとか』と、手ひどく裏切られた気持ちでしょう」
2021年には、コロナ禍での東京五輪中止を社説で訴えながら、その後も大会スポンサーに名を連ね続け、同社の矛盾した姿勢が批判の的になった。
不動産で儲ければいい
だが、部数が急減する一方で、意外にも経営面では“V字回復”を果たしている。2021年3月期連結決算で約442億円もの赤字を出して渡辺雅隆前社長が事実上の引責辞任をしたが、そのわずか1年後、約129億円の純利益を出し、2022年3月期決算で黒字化したのだ。
部数が減って儲かるとは、どんなカラクリがあるのか。経済紙記者の話。
「今の朝日は不動産事業が収益の大きな柱となっています。都心の一等地に有楽町マリオンなどの複合施設や高級ホテルを持つほか、2012年には大阪・中之島にある大阪本社を建て替えて2棟建ての超高層ビルにした。新聞を軸にしたメディア・コンテンツ事業の損失を、不動産事業で穴埋めする構造なのです。朝日はデジタル、不動産、イベントを収益の3本柱にすると明言しており、有価証券報告書でも『プリントメディア事業中心の事業構造から脱却することが当社の大きな課題』と記載しています」
そうしたなかで話題になったのが、今年8月から始まった「朝日新聞デジタル」の原則有料化だ。現在、ネットでは記事の“導入部分”しか無料公開されていない。朝日OBのジャーナリスト・前川惠司氏が言う。
「米紙ニューヨーク・タイムズをお手本にしたようですが、同紙がデジタル化で成功したのは、広大なアメリカでは紙版を届けるのに日数を要していたことが背景にある。そもそも世界的な影響力も大きい。同様の成功はあり得ないでしょう」
人員整理(リストラ)も経営改善に一役買っているようだ。同社では2022年9月から11月にかけて、45歳以上の社員を対象に、200人以上の希望退職者を募っている。 「対象の社員には、これまで任意参加だった早期退職説明会や転職サポートの社内講習会に、必ず一度は参加するよう社内メールで通知が来ています」(50代の朝日社員)
元朝日新聞記者での鮫島浩氏が言う。
「社の上層部から聞いた話では、メディア界のリーダーとして復活することは諦めているようです。不動産事業で黒字が出せれば、自分たちの定年までは安泰。下手に動いて急速に傾くことを恐れ、徐々に先細りする延命策を取るというのです。デジタル完全有料化は、多くの人に記事を読んでほしいという記者の原点を放棄するもの。アンチ朝日による批判や炎上を避けて、プライドを守るという内向きの選択です」
田島泰彦・元上智大学文学部新聞学科教授はこう指摘する。
「モリ・カケは追い詰められなかったが、朝日には旧統一教会と自民党候補者との政策協定をスクープするなど、力のある記者が残っている。しかしながら、今のように『権力と軋轢を生まず無難にやればよい』という姿勢では、クオリティ・ペーパーとしての未来はない」
本誌の取材に、朝日新聞広報部は400万部割れを認めた上で「部数回復等の施策については、弊社の重要な機密事項にあたるので回答は控えます」とした。
読者の支持を失ってまで、朝日が守ろうとする「価値」とは何なのか。
(了)
※週刊ポスト2022年11月11日号
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