AI規制論、オープンAI社のもたつき、AIと精神世界の関連は? 意外や意外。プーチン大統領がAI社会の本質を衝いた演説をしていた(宮崎正弘国際情勢解題)
2023年11月24日、モスクワで開催された「AI会議」(「人工知能の旅 2023フォーラム」)で、プーチン大統領は演壇に立った。
プーチンは生成AIの発展を展望し、傾聴に値するスピーチをしている。
「科学、教育、医療などの分野で人工知能を活用することで、人類はその実存の新たなチャップターに足を踏み入れた。生成AI技術の出現は明らかな発展である。新技術が国の経済と社会領域のあらゆる分野にますます浸透している」と最初に指摘した。
プーチン大統領は実例をあげて、「石油井戸開発のコストを大幅に削減にAIは活用されている。また北極海航路の物流の拡大に貢献している。AIによって日常のプロセスがよりシンプルで便利になり、医療や公共サービスの管理とメカニズムの質が向上する。また画像やテキストを作成できる生成AIの急速な発展は人類の知性の傑出した成果だ」。
しかしAIの脅威とは『悪用』である。
技術の倫理的、道徳的、社会的影響についての疑問がる」として、プーチン大統領は続けた。
「生成AIの研究開発を一時停止するという提案は『禁止』ではなく、いや禁止は不可能でさえある。技術は発展するものなのだ。したがってAI技術の進歩において、倫理的規制は必要だが、そうしたガイドラインは伝統的な価値観と文化によって定められるべきだ。西側AIシステムと検索エンジンは主に西側市場を対象としており、多くの場合、選択的かつ偏った方法で動作し、例えばロシア文化などを考慮せず、或いは無視している。『国家のアイデンティティ』を維持する上で重要な要素は文化的および精神的遺産である」
正論である。
日本にあてはめるとAI活用で、言論空間では巧妙に言論の検閲がなされ、しかもイデオロギーで凝り固まった基準で情報が操作されている現実がある。
倫理も道徳も社会規範もなければ、伝統的な価値観を軽視している。チャットGPTでの論文作成は、創造力を奪い、たとえば故人の手塚治虫の漫画の新作が勝手に創られ、これらは人間の本質にある創造性を歪める側面があるのではないか。
欧米はAI規制を真剣に検討し始めており、新しいルールを模索しているが、そのルールに従いそうにない中国とロシア。そのロシアのトップが人間の実存と文化の問題を提議したことは記憶するに値するだろう。
▼AI規制論はなかなか合意が得られない
AI規制論、オープンAI社のもたつき(サムアルトマンCEOは解雇されて五日後に復帰した)。AIと精神世界の関連に関して、意外や意外。プーチン大統領がAI社会の本質を衝いた演説をしていたことになる。
筆者は拙著『半導体戦争』(宝島社)のなかで、こう書いた。
「アップルの創始者、スティーブン・ジョブスは晩年、日本の木版画の浮世絵や設楽焼などの素朴な、端正な陶器に異様な関心を示した。もっと長生きしていたらジョブスはおそらく縄文土偶や火炎土器に深甚な興味を抱き、発明を人間の知恵との宥和に持って行っただろう。ベジタリアンで日本食が大好き、ライバルのビル・ゲーツも日本に惹かれ軽井沢の別荘には檜風呂をしつらえるほどの凝りようだった。
ジョブスは天才的発明家にしてアイフォン、アップルなど文明の利器の牽引者だったが、なぜ日本精神の極地を代表する美術品に惹かれたのか?
このあたりにAI文明と精神世界との融合がはかれる謎が隠れているのではないか」(引用トメ)
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