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トルコ、イラク、UAE、カタールの4カ国がスエズ運河の代替ルート イラクのペルシャ湾側からトルコをめざす輸送ルート建設構想(宮崎正弘国際情勢)

東アジア歴史文化研究会

2024年4月のことだった。

トルコ、イラク、UAE、カタールの4カ国首脳はイラクを縦貫する輸送網の建設、新しい国際的な物流経路の構築で合意した。スエズ運河の代替ルートである。

同月22日、エルドアン大統領はイラクを訪問し、世紀のプロジェクト案件を煮詰めた。

トルコ大統領が提唱したのは、イラクのペルシャ湾側(バスラの東、新アルファオ港)からトルコ北西部をめざし、イラク北西部のキルクークあたりまで1200キロを繋ぐ新しい『シルクロード』である。

実現すれば中近東の輸送ルートが大きく前進する。

バグダッドとトルコを繋いだ鉄道は廃線となっているが、軌道跡が残っているため、この区間はトンネルの補強工事などでルートは確保できる。イラク領内もクルド族の支配地区の南側をとおる予定なので治安は維持できるとしている。

スエズ運河ルートは紅海航海中の船舶をイエーメンの武装勢力フーシ派が、イランから供与されたミサイルなどで襲撃しているため、西側の輸送航路は大きく南アフリカのケープタウンを迂回している。この迂回による損失は経済的に70億ドルに達する。

スエズ運河が事実上閉鎖されているため、極東、とくに日本、韓国、台湾などからの貿易は遅滞を余儀なくされている。他方、ユーラシア大陸横断の鉄道は、ウクライナ危機とは無縁に運営されているので、中国からの欧州向け陸上輸送ルートが確保されている。

ホルムズ海峡を越えてペルシャ湾に入り、イラク最南東の新アルファー港から西北西は添いに道路が建設される構想はすでに設計は終わっている。

残りの問題は資金をどうやって調達するか、だ。総工費170億ドル。胴元はカタールとUAEになるという。

筆者は1988年、イラン・イラク戦争の最中に取材でバグダットからバスラへ飛んで、ファオ半島の戦場を取材した経験がある。

イラク南部は黒づくめの衣装を着て顔を隠す女性ばかりで、シーア派拠点であり、砂嵐でカメラの保護が必要だった。荒涼たる砂漠である。

▼マラッカ海峡の代替として半世紀前からいわれてきた「クラ運河」構想は、その後も一歩も進捗していない

第一にマラッカ海峡の代替として計画されているクラ運河だが、構想からすでに半世紀、着工の気配もない。
言いだしっぺは筆者の記憶ではハーマンカーンだったと思うが、その後、下田駐米大使が、クラ運河工事には核爆発で工事を進めたら良いと言い出して、国際的な物議を醸し出したことがある。

第二に、このイラク縦貫輸送ルートが完成するとしても十年後のことで、そのときスエズ運河は航行が円滑化しているのではないか。紅海ルートが平穏に戻れば、イラク縦断の輸送路プロジェクトは宙に浮く。また工事をはじめても、イラクに暗躍するISなど過激派がテロを繰り出すことも予測され「第二のグアダール化」する懼れがあり、所詮は絵に描いた餅に」すぎなくなる。

第三にUAE、カタールはペルシア湾を挟んで南対岸に位置し、イラクルートでは裨益しない。資金を期待されても、大金を投じるとは考えにくい。

2025年3月15日、トランプ大統領はイエーメンの親イラン武装組織フーシ派に対する攻撃を命じた。紅海などで西側船舶への攻撃は「容認できない。停止するよう」要求してきたが、フーシ派は聞く耳を持たなかった。米軍空母から発進した戦闘機、爆撃機はフーシ拠点を空爆し、数百の死傷者がでた。

トランプは、「イランから資金提供を受けているフーシ派は、米軍機に向けてミサイルを発射し、我々の部隊と同盟国を標的にした。その海賊行為、暴力行為、テロ」によって「数十億ドルが失われ、人命が危機にさらされている」と攻撃理由を説明した。