東アジア歴史文化研究会のブログ

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フランス、安楽死を合法化へ 欧米は本人意思による安楽死、医師の自殺幇助を容認(宮崎正弘国際情勢)

東アジア歴史文化研究会

森鴎外の名作「高瀬舟」は遠島処分になった「罪人」を運ぶ船である。

主人公の庄兵衛は護送役人として乗り込むのだが、なかにしずんだ様子もない三十代の喜助が混ざっていた。他の全てが落胆、絶望の淵に沈んでいたが、喜助だけは淡淡としている。訳を問うと病気がちで生きる希望もなくした実弟の自決を助けたというのだ。この鴎外の作品が近代日本での安楽死論議の魁となった。

たとえば西部邁の自殺を幇助したふたりは「犯罪」扱いされて実刑を受けた。「日本は生命尊重で魂は死んでも良いのか」とした三島の檄文とは逆方向に、意識がない末期患者でも延命させるという、尊厳死からは遠い遠い価値観が蔓延ってしまった。

スイスやオランダでは安楽死が認められている。自殺幇助は合法である。ルクセンブルク、ベルギー、カナダ、オーストラリアの一部、ニュージーランド、スペイン、コロンビアなどの国・地域は「積極的安楽死」と「医師幇助自殺」を容認している。オランダは「要請に基づく生命終結と自死介助法」が成立させ、統計によれば2022年までに8,720人が安楽死を選択した。

消極的安楽死を容認する国は多く、イタリアでは2017年に「尊厳死法」が成立した。韓国でも延命治療を中断する法律が2018年に成立。米国、ドイツ、英国、オーストリアなどの欧州諸国と、インド、タイ、台湾、シンガポールなどでも容認されている。

2025年5月27日、フランス議会下院は「安楽死合法化」を多数で可決した。条件は自己の意思により、それを望むフランス人、ならびにフランス永久の外国人に限られ、安楽死を希望して訪仏する外国人には認められない。

安楽死の要件には、治療法がなく死期が近いこと、耐えがたい苦痛があること、患者の明確な意思確認、医師による処置が含まれる。「死を間近にした人が、身体的苦痛に耐えかねて自らの意思で医師に死期を早めてもらうこと」と定義されている。

消極的安楽死とは延命治療を中止し、死期を早めることである。人工呼吸器の取り外しや、必要な薬の投与停止。患者の苦痛を緩和させ、尊厳を保ちながら死を迎える。日本では、これは医師の嘱託殺人となる。

現在日本には意識がなく植物人間となっていても、延命措置で生命体が生きている人が夥しい。安楽死を認める運動は大きな輪となって拡がっているが、依然として国会では本格的な議論にはなっていない。