米ファンド、中国市場は「賭博の場」と警鐘 GDP指標に疑問も 苦境の習政権

2015.07.18
上海株バブル崩壊に米ヘッジファンドが警鐘を鳴らす。中国経済への不信感も強まるばかり(AP)
中国経済の虚飾がはがされようとしている。4~6月期の国内総生産(GDP)成長率は前年同期比7・0%増と事前の予想を上回ったが、低迷する実体経済とかけ離れており、当局がデータを操作したとの疑念も強まる。半ば人為的に株高をあおった株式市場についても米ヘッジファンドなどは「2008年のリーマン・ショック前より危険」と警告、国際金融機関を名乗るアジアインフラ投資銀行(AIIB)も中身が伴わない。習近平政権は世界の信頼を失うばかりだ。
中国国家統計局が発表した「7・0%」というGDP成長率について「正しい数字だと自信が持てる人はいるのだろうか」と疑念を投げかけたのは「物言う株主」として著名なビル・アックマン氏。市場の事前予想はおおむね6・8~6・9%で、7%割れするとみられていた。
週刊東洋経済元編集長の勝又壽良氏も「“作った数字”ではないか」と疑問を呈する。「悪い数字が出てしまうと、上海株の暴落が止まらなくなる。株価対策の意味合いもある」というのだ。
中国のGDPの数値が、経済実態を反映していないと疑う金融関係者は少なくない。ある日銀幹部は、GDPが信用できないとの見方を示し「中国経済が抱える問題は相当深刻だ」と指摘した。
中国国家統計局の盛来運報道官は「成長率は客観的な状況を反映している」と述べ、データ操作を否定するが、実は李克強首相もGDPを信じていないことで知られる。
李首相が遼寧省の党書記だった2007年、当時の米国大使に「GDP統計は参考用にすぎない」と述べたことが、内部告発サイト「ウィキリークス」が米外交公電を公開したことで明らかになっている。
米議会の米中経済・安全保障委員会も2013年に公表した「中国経済データの信頼性」という報告書でGDPなどの指標に疑問を呈している。
李首相は米公電のなかで、信用できるデータとして、電力消費と鉄道貨物輸送量、銀行融資をあげている。中国ウォッチャーの間では、これらは「李克強指数」と呼ばれているが、電力消費は今年に入って前年比でほぼ横ばい、鉄道貨物輸送量は10%超の落ち込みを記録した。前出の勝又氏は「実際の成長率は5%割れでもおかしくない」とみる。
投資家も冷淡だった。GDPが予想より良かったにもかかわらず、15日の上海総合指数は一時4%超の下落を記録するなど大幅続落。16日ももみ合いに終始した。
米ヘッジファンドのエリオット・マネジメントを率いるポール・シンガー氏は、中国市場の熱狂は「世界恐慌が起きた1920年代後半の米国に似ている」と語る。
ペリー・キャピタル代表のリチャード・ペリー氏は「(中国市場は)だんだん賭博の場と化してきている」と懸念を隠そうとしない。
「2008年のリーマン・ショックを受けて中国政府は4兆元(約80兆円)の投資を行った結果、過剰設備と国有企業の過剰な借金が残った。国策相場で国有企業を次々と上場させ、売り出した株の金で借金を返そうと狙ったのが今年6月までの株高だったが、暴落で水の泡になった」と勝又氏は解説する。
実体経済も厳しい。過剰投資の反動で不動産バブルが崩壊し、地方都市は誰も住む人のいない高層マンションが立ち並ぶゴーストタウン(鬼城)化した。製造業でも「世界の工場」と呼ばれたのは昔の話で、生産コストの高騰により、東南アジアなどへ生産拠点を移す「脱中国企業」が続出している。
こうした苦境を切り抜ける仕掛けの一つが株価のつり上げで、もう一つがAIIBなどインフラ投資だったという。中国事情に詳しい評論家の宮崎正弘氏は「過剰在庫のはけ口としてAIIBや、シルクロード構想をぶち上げたが、AIIBでは署名を見送る国が相次ぎ、信用が失われつつあるところで上海暴落が起こるなど、あてが外れてしまった」と語る。
袋小路に陥った経済は、習政権の立場も危うくすると宮崎氏は指摘する。
「『反腐敗』を掲げて政敵を次々と打倒する習主席に対しては、共産党内の反発もあったが、当初は経済成長の裏打ちがあって比較的うまく政権運営ができてきた。しかし、経済が落ち込むと党内はここぞとばかり権力闘争になり、民衆の支持も失う。習主席にとって極めて深刻な事態で、GDPの数値をよく見せて時間稼ぎするぐらいしか手がなくなっているのではないか」
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