米欧関係は修復されず、しかし亀裂は深まらず ルビオ国務長官の演説に欧州首脳は一定の安堵感(宮崎正弘国際情勢)
メルツ(独首相)がミュンヘン会議の冒頭で言い放った。
「ルールに基づく世界秩序はもはや存在しない」。言外にはトランプのアメリカファーストは、欧米が構築してきた秩序を破壊しつつあるという警告だった。
メルツは続けた。「我々の自由は保証されていない。欧州人は犠牲を払う覚悟が必要だ」。(この発言はトランプのNATO諸国へGDPの5%の国防費分担要求に応えるかたちとなった)
2026年2月13日から開催された「ミュンヘン安全保障政策会議」は民間主催で公式的な国際会議ではないが、ダボス会議同様の影響力をもつ。会議のモットーは「対話による平和」で世界最大規模、換言すれば国連の影響力を凌ぐ。
欧州の首脳らが危惧するのは一年前のヴァンス副大統領の演説だった。ヴァンスは、英国を含む欧州諸国の言論の自由と移民政策を強く批判したため大西洋を挟んで欧米関係に緊張をもたらした。その後、トランプ米大統領が北極圏の領土を併合すると宣言し、欧州諸国からの輸入品に関税を課し、グリーンランド領有にくわえてカナダは米国の五十一番目の州だ等と唱えたため、欧州列強はグリーンランドにおっとり刀で軍隊を派遣した。
注目されたのはマルコ・ルビオ国務長官の演説だった。
かれはヴァンスとは打って変わって、「米国は大西洋横断同盟を放棄するつもりはない、米国の運命は常に大陸の運命と絡み合っている」と述べた。ルビオは続けて「我々は分離を望んでいるのではなく、古い友情をよみがえらせ、人類史上最も偉大な文明を新たにしようとしている。アメリカが新たな繁栄の世紀への道を切り開いていること、そして再び、我々の大切な同盟国、そして最も古い友人である皆さんと共にそれを実現したい」
ルビオ演説のなかで、「移民政策」を“文明への脅威”と表現し、「気候カルト」が経済政策を乗っ取ったと発言しており、この基調はトランプ政権が欧州に繰り返し浴びせてきた批判の繰り返しである。
ルビオ国務長官は、「国際協力体制は再構築されなければならない」として国連を批判し、ガザとウクライナの紛争の解決に「実質的に何の役割も果たしていない」と述べた。「イランの核開発計画を抑制する力は国連にはない」とも明言した。
さて会議場の外の動きである。
20万人が世界各地からミュンヘンに集まってイラン政府に抗議する集会を開いた。多くはイラン国旗と、亡命中のレザ・パフラヴィー(パーレビ皇太子)のポスターを掲げた。国王復帰を望むイランの反政府集会がこれほどの規模で行われたことは注目してよい。
イラン情勢の急変が、次の数週間で起こりそうだ。
▼トロントでは35万人、ミュンヘンでは25万人がイラン抗議行動
ところが、このミュンヘン抗議集会の実像をもっと詳しく報じたのが米軍「星条旗新聞」で参加者が25万人と警察が発表した。米国亡命中のパーレビ“皇太子”がテヘランに対する国際的圧力を強めるよう呼びかけた(「皇太子」と書いている)
集会では太鼓を叩き、政権交代を求めるシュプレヒコールを上げた。
ほかにロサンゼルスとトロントでも開催され、トロント警察によれば、じつに35万人が街頭デモに参加した。
ミュンヘンの集会では、デモ参加者が「イランを再び偉大に」と書かれた赤い帽子。これはドナルド・トランプ米大統領の支持者がかぶるMAGAキャップを模倣したもので、共和党上院議員リンジー・グラハムも参加していた。
キプロスのニコシアにある大統領官邸の外でも約500人の抗議者が集会を開き、その多くがイラン政府に反対しパーレビ皇太子の国王復帰を支持する横断幕を掲げた。
人権活動家通信社(Human Rights Activists News Agency)によると、先月の抗議活動では少なくとも7,005人が死亡した。イラン政府は3,117人が死亡したと発表した。トランプはイランの政権交代が「起こりうる最良の事態」だと示唆した。
カナダのアニタ・アナンド外相が明
言した。
「カナダはイランの政権交代を望んでいる。イランの政権交代がない限り、我々はイランと外交関係を開くことはない。ピリオド」
ミュンヘン安全保障会議に出席中のアナンド外相(女性)は、『グローブ・アンド・メール』紙のインタビューに答えた(2月13日)。カナダはイランと2012年に外交関係を断絶している。反面でカナダは、米国が断交しているキューバとは親しい。
▼王毅然も吠えたが相手にされず
王毅がミュンヘン安全保障会議に出席し、日本批判を声高に続け、高市早苗首相の台湾有事に関する国会答弁について「中国の領土主権を侵害した」と批判した。
王外相は、質問に応じ、「ドイツはナチスの犯罪を徹底的に清算した」と指摘し、日本について「台湾侵略の野心を持ち続け、軍国主義の亡霊が今もこの国をさまよっている」と主張した。日本国民に向けて「極右勢力に引きずられてはならない」と訴え、「平和を重んじる全ての国は、今こそ日本が逆戻りしないよう警告すべきだ」と会場に呼びかけた。
この代わり映えのしない中国外相の“戦狼発言”を日本のメディアは大きくとりあげたが、欧米メディアはまったく無視している。
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