「晩餐会には米国の複数のテクノロジー企業の幹部を含む130人が出席した 中国のテクノロジー企業の幹部は一人も出席していなかった(宮崎正弘国際情勢)
トランプ大統領は習近平主席に、歴代イベントの展示を案内しながら言った。
「われわれは建国以来250年の歴史を誇りにおもう。中国は6000年の歴史がある」
“建国”というなら米国はたしかに250年だが、中華人民共和国は建国以来77年しかない。敢えてトランプはそのことに触れなかった。
そして9月25日のお茶会で、習近平が言い出した。
「年内にわれわれはあと二回逢います」
11月のAPECは中国で、12月のG20は米国で開催される。つまり九月の習近平訪米では何一つの合意に到らなかったが、次の会合の期待を持たせたのである。習近平はトランプが用意した土俵には載らなかった。
ホワイトハウスの晩餐会には双方の主要閣僚が雁首を揃えたばかりか、米AI大手のスーパースターがずらり。イーロン・マスク、ペゾス、ザッカーバーグ、セルゲイ・ブリン、ジェンセン・ファン、リズ・スー、エリック・ハリソンほか。
ところが中国側のAI大手企業幹部は誰も随行せず、アリババもテンセントもディープシークも、ムーンショットも、Z.aiも欠席だった。なぜなら彼らは「蒸留」と辛辣に咎められるだろうし、米国の雰囲気に中国AI企業幹部が感染することを習近平が畏れたからだろう。
台湾の有力紙『自由時報』(2026年9月27日)が興味深い分析をしている。
「晩餐会には米国の複数のテクノロジー企業の幹部を含む130人が出席した。対照的に、中国のテクノロジー企業の幹部は一人も出席していなかった。
(中略)
ジェンセン・ホアン氏を含む4人の純資産の合計は1兆ドルを超え、彼らが代表する企業の時価総額の合計は(当日九月)24日の取引終了時点で12兆ドルを超えている。アナリストらは、この国賓晩餐会の席順は、急成長する世界のAIインフラを牽引する巨大テクノロジー企業が、両経済大国間の関係強化をいかに推進しているかを浮き彫りにしている。
メインテーブルに名を連ねる4社すべてが中国市場に大きく関与している。対照的に、中国人起業家が不在であることは、現在、米中間のビジネスおよび投資関係の緊密化をどちらの側が推進しているかを浮き彫りにしている。
特筆すべきは、クロードAIモデルを開発したアントロピック社の代表者が、国賓晩餐会に出席していなかったことだ。アントロピック社のCEO、ダリオ・アモデイ氏は北京政府を声高に批判し、中国のAI産業に対する米国の厳格な輸出規制を強く主張している。対照的に、OpenAIは現在中国で事業を展開していないものの、CEOのサム・アルトマン氏と社長のグレッグ・ブロックマン氏はともに晩餐会に招待されていた」。
▼ハッカー軍団、金融詐欺集団、テロリストは必ず悪用する
問題は蒸留が物まねか、著作権違反か、いったいどの法律に抵触するのかというレベルの問題ではなく、この安価攻撃は中国が米国AI企業を潰そうとしている凄まじい戦略にある。
アントロピック、オープンAI、グーグルは、中国企業が自社の人工知能技術を不当に模倣していると非難してきた。AIの危険性に対する懸念が高まり、米国政府、テクノロジー企業がAI開発の減速を求めている。
ところが多くの専門家は、AnthropicやOpenAIといった企業の主張は誇張されていると主張している。
「中国の技術のあらゆる機能がAnthropicのモデルから来ているという話は、人々が言うほど真実ではない」(Basetenのチャールズ・オニール)。
2010年代初頭に初めて開発された蒸留技術は、AI研究者がより効率的な技術を構築するための手段として用いられた。既存のシステムからデータを収集し、そのデータを利用して、より安価なハードウェアで動作する新しいシステムを構築した。
他社が開発した技術からデータを収集する手段としても利用される。蒸留業者は、これらの既存のAIシステムによって生成された情報を利用して、独自の新しいシステムを訓練することができる。
一部の法学者は、蒸留は企業秘密保護法に違反する可能性があると指摘している。なぜなら著作権法は必ずしも適用されるとは限らない。蒸留はシステムのテキストを逐語的にコピーするのではなく、システムの一般的な動作をコピーしようとする試みだからである。
米国内では違う動きがある。
AnthropicとOpenAI社は、著作権で保護されたインターネットデータを不正に利用してシステムを訓練したとして、複数の訴訟に直面している。同社は数百万冊の著作権で保護された書籍を不正にダウンロードして保存したと判決を受け、著者や出版社グループに15億ドルを支払うことに合意した。この和解金は、米国の著作権訴訟史上最大の支払額となった。
▼巨額の賠償、巨額の裁判費用を中国のAI企業は心配しない
AI大手は同様の訴訟に直面しており、 2023年にはニューヨーク・タイムズ紙が起こした訴訟ではOpenAIとそのパートナーであるマイクロソフトが、タイムズ紙が掲載した数百万もの記事を利用してチャットボットを訓練し、その結果、チャットボットが情報源として同紙と競合するようになったと主張している。OpenAIとマイクロソフトはこれらの主張を否定している。
また9月25日、ワシントンDCの控訴裁判所は「国防総省がアントロピック社を軍事契約から除外し、このAIスタートアップ企業を国家安全保障上のリスクとみなす命令を差し止めることを拒否した。
つまりアンソロピック排撃のペンタゴンの措置は正しかったと判決しているのである。
同社は、この指定によって数十億ドルの事業損失が発生し、待望の新規株式公開を控えた評判が損なわれたと主張している。
メタの賠償金も天文学的である。
2026年8月、米国の47州で、インスタグラムやフェイスブックが子どものメンタルヘルスや依存に悪影響を与えたとされる訴訟をめぐり、メタは10年間にわたって最大180億ドルの支払いに合意した。
個別裁判での賠償命令・評決でも2026年3月には、カリフォルニア州ロサンゼルスの裁判所陪審団が、SNS依存でうつ病を発症したとする原告女性の訴えを認め、メタとGoogle(YouTube)に対し計600万ドルの損害賠償・罰金の支払いを命じた。
中国のAI企業には、こうした心配はない。
そればかりか政府が巨額の補助金を受けて、輸出を奨励しているのである。
中国企業は恐らく、アメリカ独自のシステムを抽出したのだろう。中国企業DeepSeekが昨年、特に強力で効率的なシステムを発表し、アメリカの研究者や投資家に衝撃を与えた後、OpenAIはDeepSeekが自社の技術を盗用したと非難した。
中国企業はこれらの告発に何も反応を示していない。
ビル・ゲイツは「AIは10億人の死者を出すような事態を引き起こせるほど強力だ」と警告し、政府による規制強化を訴えた。「悪意を持つ人間と最新のAIの組み合わせほど強力な兵器はかつてなかった。何者かによる大規模な悪用はすぐにでも起こりうる。そのリスクに目を向けるべきだ」とテレビ番組で語った。
悪用するのは誰か、名前を挙げるまでもないことである。
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