【国際秩序の大転換②】トランプ現象はグローバリズムへの反発 世界の現状は混乱の極み
2016.11.02
誰も予測しなかったのが、米大統領選の共和党候補、ドナルド・トランプ氏の「善戦」ではないか。
移民排斥、中国は為替を操作し米国人の雇用を奪った、メキシコ国境に壁を築け、イスラム教徒の入国を拒否しよう…。
当初、泡まつ候補、道化師といわれたのに、共和党の正式な大統領候補となった。草の根の不満を吸収し、プアホワイト(白人貧困層)のみならず、反エスタブリシュメントの風潮が米国を覆った。この出発点は、2011年9月、「われわれが99%」といってウォール街に座り込んだ庶民の不満爆発の流れに、さかのぼることができる。
国際金融と通商のルールはWTO(世界貿易機関)、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)が象徴するように、米国が決めてきた。
ドル基軸は、戦後ブレトン・ウッズ体制の要で、世界は米国を中心に回るような仕組みを作った。特に金本位を離れた米国はサウジアラビアと密約して原油代金のドル払いを確立し、ドル基軸を延命させてきた。その中枢に国際通貨基金(IMF)と世界銀行があって、ドル基軸が機能した。
正面からの挑戦者は中国である。
SDR(IMFの特別引き出し権)に人民元が加入を承認され、勢いづく中国はAIIB(アジアインフラ投資銀行)、BRICS(=ブラジル、ロシア、インド、中国の総称)を通じて最終的な狙いは、ドル基軸体制を代替する「人民元本位制」だ。実現するかどうかはともかく、中国の覇権主義は軍事面ばかりか通貨戦争でも顕著となった。
「世界の警察官」をやめると、オバマ米大統領が発言した。
真空状態となった南シナ海をかすめ取った中国は、オランダ・ハーグの仲裁裁判所の判決が出ても、あれは「紙くず」と開き直った。白昼堂々と国際秩序を侵しているのに、周辺諸国はすくんでしまった。
制裁を横目に独裁3代目の暴君、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は核実験を続行し、北東アジアの均衡を破壊した。
「核の傘」の下の日米安保条約が“破れ傘”であることが実証された。けれども、日本政府は防衛力増強には踏み切れないで、まだ国連信仰に浸っている。
世界は恐ろしい勢いで地殻変動を起こし、国際秩序があちこちで形骸化しているのに、米国外交もまた無力化という醜態だ。
だから、欧州は、米国の基軸体制に反旗を翻した。中東諸国も、イランと核合意をなした米国に従来の信用を減退させ、サウジやイスラエル、イランまでもがロシアへ接近した。この情勢を目撃したトルコが、NATO(北大西洋条約機構)の一員でありながら、ロシアのプーチン大統領と握手した。
混乱の極み、それが世界の現状である。
■宮崎正弘(みやざき・まさひろ) 評論家、ジャーナリスト。1946年、金沢市生まれ。早大中退。「日本学生新聞」編集長、貿易会社社長を経て、論壇へ。国際政治、経済の舞台裏を独自の情報で解析する評論やルポルタージュに定評があり、同時に中国ウォッチャーの第一人者として健筆を振るう。著書・共著に『暴走する中国が世界を終わらせる』(ビジネス社)、『世界大乱で連鎖崩壊する中国 日米に迫る激変』(徳間書店)など多数。
誰も予測しなかったのが、米大統領選の共和党候補、ドナルド・トランプ氏の「善戦」ではないか。
移民排斥、中国は為替を操作し米国人の雇用を奪った、メキシコ国境に壁を築け、イスラム教徒の入国を拒否しよう…。
当初、泡まつ候補、道化師といわれたのに、共和党の正式な大統領候補となった。草の根の不満を吸収し、プアホワイト(白人貧困層)のみならず、反エスタブリシュメントの風潮が米国を覆った。この出発点は、2011年9月、「われわれが99%」といってウォール街に座り込んだ庶民の不満爆発の流れに、さかのぼることができる。
国際金融と通商のルールはWTO(世界貿易機関)、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)が象徴するように、米国が決めてきた。
ドル基軸は、戦後ブレトン・ウッズ体制の要で、世界は米国を中心に回るような仕組みを作った。特に金本位を離れた米国はサウジアラビアと密約して原油代金のドル払いを確立し、ドル基軸を延命させてきた。その中枢に国際通貨基金(IMF)と世界銀行があって、ドル基軸が機能した。
正面からの挑戦者は中国である。
SDR(IMFの特別引き出し権)に人民元が加入を承認され、勢いづく中国はAIIB(アジアインフラ投資銀行)、BRICS(=ブラジル、ロシア、インド、中国の総称)を通じて最終的な狙いは、ドル基軸体制を代替する「人民元本位制」だ。実現するかどうかはともかく、中国の覇権主義は軍事面ばかりか通貨戦争でも顕著となった。
「世界の警察官」をやめると、オバマ米大統領が発言した。
真空状態となった南シナ海をかすめ取った中国は、オランダ・ハーグの仲裁裁判所の判決が出ても、あれは「紙くず」と開き直った。白昼堂々と国際秩序を侵しているのに、周辺諸国はすくんでしまった。
制裁を横目に独裁3代目の暴君、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は核実験を続行し、北東アジアの均衡を破壊した。
「核の傘」の下の日米安保条約が“破れ傘”であることが実証された。けれども、日本政府は防衛力増強には踏み切れないで、まだ国連信仰に浸っている。
世界は恐ろしい勢いで地殻変動を起こし、国際秩序があちこちで形骸化しているのに、米国外交もまた無力化という醜態だ。
だから、欧州は、米国の基軸体制に反旗を翻した。中東諸国も、イランと核合意をなした米国に従来の信用を減退させ、サウジやイスラエル、イランまでもがロシアへ接近した。この情勢を目撃したトルコが、NATO(北大西洋条約機構)の一員でありながら、ロシアのプーチン大統領と握手した。
混乱の極み、それが世界の現状である。
■宮崎正弘(みやざき・まさひろ) 評論家、ジャーナリスト。1946年、金沢市生まれ。早大中退。「日本学生新聞」編集長、貿易会社社長を経て、論壇へ。国際政治、経済の舞台裏を独自の情報で解析する評論やルポルタージュに定評があり、同時に中国ウォッチャーの第一人者として健筆を振るう。著書・共著に『暴走する中国が世界を終わらせる』(ビジネス社)、『世界大乱で連鎖崩壊する中国 日米に迫る激変』(徳間書店)など多数。
このブログへのコメントはmuragonユーザー限定です。