東アジア歴史文化研究会のブログ

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朝鮮半島の地政学(3)韓国の〝二股外交〟

東アジア歴史文化研究会

第1則「大陸国家・中国への従属性」から派生する「韓国の〝二股外交〟」について説明したい。

  • 朴槿惠大統領(当時)の〝二股外交〟

〝二股外交〟は朴槿惠大統領時代が顕著であった。

朴槿惠大統領は、米国と中国を両天秤にかけながら狡猾に〝二股外交〟を展開していた。朴大統領は朝鮮戦争以来60年も続いてきた米韓同盟から少しずつ距離を取り始め、かつて朝鮮戦争時は敵であった中国に接近した。

朴大統領は中国・習近平主席の顔色をうかがい、米国の要求を無視するようになった。米国(オバマ政権)がこれに対して怒りをあらわにし始めたのは2013年9月のヘーゲル国防長官の訪韓時からだった。

この時、米国防長官は、韓国に米国のミサイル防衛(MD)への参加や、米日韓の三国軍事協力体制を呼びかけた。

これに対して朴大統領は、「日本の従軍慰安婦問題」を持ち出して、全てを断った。更に青瓦台(大統領府)は、まるで中国におもねるかのように、「米国の要請は拒否した」と内情を暴露する挙に及んだ。

ヘーゲル国防長官は、"コケ"にされたのだ。

因みに、朴大統領が"エクスキューズ"として持ち出し、韓国が一方的に旧日本軍が性奴隷として約20万人の朝鮮半島出身女性を拉致、強制連行したと主張している、従軍慰安婦問題は、朝日新聞の捏造記事から始まった。

2014年になって朝日新聞はようやく「旧日本軍が慰安婦を強制連行した」とする吉田清治氏の証言を報じた記事を取り消し、謝罪と反省を表明し、日本では「捏造」と断定された。朝日新聞の措置はまことに遅きに失したものであり、著しく国益を毀損した"犯罪"と呼ぶべきものである。

米国のミサイル防衛(MD)への参加や、米日韓の三国軍事協力体制を呼びかけに、朴大統領が従軍慰安婦問題を理由に拒否したことに対して、アメリカはバイデン副大統領は2013年12月に訪韓した際に「米国の反対側に賭けるのは、いいやり方ではない」と警告し、更にケリー国務長官が「日本と韓国は歴史問題を棚上げせよ」と述べ、ストレートに「離米従中」を「反日」で誤魔化すのをやめるように釘を刺した経緯がある。

  • 〝二股外交〟の背景

韓国が〝二股外交〟を展開する背景として、筆者は二つの理由があると思う。

第一は、朝鮮半島の地政学・第1則「大陸国家中国への従属性」から説明できる。

第一則で述べたように、朝鮮半島は大陸国家の中国への従属性が強い。このことは、前回「冊封・事大主義・小中華思想」で説明したように、歴史から見ても明らかである。

しかしながら、中韓関係は朝鮮戦争の経緯から、歴史の流れから見れば例外的に敵対関係にあったが、冷戦崩壊後の1992年になってようやく中韓国交正常化が行われた。

私自身、中韓関係の地政学的な従属関係の強さを垣間見る機会があった。

これは、韓国国防部のある人物から「秘密」のこととして聞いた話であった。私が防衛駐在官時代(1990年から93年)の間に韓国はソ連次いで中国と国交正常化を行った。これにより、朝鮮半島の戦略環境は〝コペルニクス的変化〟を遂げた。

韓国は中国との国交を樹立したことにより、これを梃に、北朝鮮を背後から牽制する道(可能性)が開けた。

しかし、大国の中国が格下の韓国の意のままになるはずもなく、地政学的には韓国はむしろ中国の影響下に取り込まれやすい傾向にあり、韓国は中韓国交正常化を契機に、新たな戦略環境の中で、米国と中国の間で困難な舵取りを余儀なくされることになった。

私は、盧泰愚大統領が、中韓国交正常化の直後に、国防部や外交通商部などに対して、「中韓国交正常化を機に新たな軍事同盟・外交戦略のあり方について検討せよ」と命じたという「秘話」を聞いた。

韓国政府はそれまでの①米韓軍事同盟関係に加え②中国との軍事同盟、③米、中、日を含む

等距離軍事・外交関係の3案について国防部を中心に真剣に議論したそうだ。

従来の米韓関係から見れば論外と思われる「②中国との同盟」というオプションが唐突に浮上したのは、地政学(大陸国家中国への従属性)と過去の中国歴代王朝に対する冊封の歴史に由来すると見られる。

韓国の中国に対する思い入れの深さ、ないしは潜在的な恐怖心を窺い知るような気がした。

ちなみに、検討結果は①米韓軍事同盟の維持であったと聞いた。 

ところが、当時から20年以上も経って誕生した朴政権は限りなく「②中国との同盟」の方向に進みつつあった。

朴政権のみならず、その後の韓国政権(特に廬武鉉・文在寅などの左翼政権)は米韓同盟関係にありながら中国に秋波を送る傾向があった。

〝二股外交〟の第二の理由は、米中パワー(政治・軍事・経済などの総力)バランスの変化であろう。

日本・朝鮮半島を含む北東アジアは「昇る中国」と「沈む米国」の狭間にある。米中のパワーの均衡点は下図のように徐々に東に移動していると見られる。


米国は冷戦構造の崩壊により、軍事予算を削減したが、中国は約30年間も軍事予算を2桁近いの割合で増やしてきた。

この結果、図のように米国と中国の軍事バランスの均衡点は、東に移動しつつある。冷戦時代頃まで、パワーの均衡点は朝鮮半島の非武装地帯(DMZ)付近にあったものが、中国の台頭とともに東に移動し、やがて釜山、日本列島(第一列島線)と移動していくことだろう。

その結果、まず韓国が中国のパワーが米国を上回る圏内に入るだろう。

2010年に起こった、韓国海軍哨戒艇の撃沈事件やヨンビョン島砲撃事件などは、朝鮮半島においては既に米軍よりも中国軍のパワーのほうが上回っていることを裏付ける証左かもしれない。

今後、中国の経済発展を基盤に軍事力の強化が継続し、米国の軍事力を凌駕するようになれば、やがて日本も中国のパワー勢力圏内に入る日が来るかもしれない。

これまで韓国は北朝鮮の脅威を防衛するためには、米国に頼らざるを得なかった。

だが、中国が背後から〝羽交い絞め〟するような格好で、北朝鮮を牽制できる状態になった。また、中韓の経済関係は米韓経済関係を上回る状態にある。

韓国は米国との同盟から中国にシフトすることで安全と繁栄を得ることが可能となった。

  • 磁石で吸い寄せられるように

このような訳で、当時の朴大統領は、米国と中国を両天秤にかけながら狡猾に〝二股外交〟を展開する余地が出てきたのだ。

朝鮮半島の地政学・第1則「大陸国家中国への従属性」から見ても、今後米中のパワーバランスが、図のように東進する傾向が継続すれば、韓国は磁石に吸い寄せられる鉄片のように、限りなく中国の属国に転ずる可能性がある。

そうなれば、日本は米中覇権争いの最前線に立つことになる。