【お金は知っている】 「日本人は貧乏」と中国人があきれるワケ デフレ経済から脱却できず…消費者物価「増」も月給は「減」

2022.9/23
消費者物価が上昇しているとはいえ、率は2%台にとどまる。8~9%台の米欧とは段違いに低いのに、「物価高」で大変だと騒ぐ。表面ばかり追い掛けるメディアにうんざりしていたところ、「なるほど」と感心した記事があった。
9月7日付、産経新聞朝刊「東京版」である。見出しは「泥酔させ現金引き出す 中国酒混入 赤羽で多発 強引客引き」。
場所は東京都北区赤羽の立ち飲み屋が並ぶ一角、中国籍の女らが客を泥酔させ、近くのコンビニのATMで多額の現金を引き出させる。逮捕された彼女らはスマホで中国の交流サイト「微信(ウィーチャット)」で煩雑にやりとりしていた。その中に、「日本人は金持っていない」「今のお客さんは(略)私たちより貧乏。お客さんは年間50万~60万円の貯金しかできない」とある。そうなら、日本じゃなく母国の中国で荒稼ぎしたらどうか、と突っ込みを入れたくなるが、身につまされるリアルな話なのだ。
なぜ、日本人は貧乏なのか。グラフは、消費者物価、勤労者月収と国内総生産(GDP)の各四半期末までの年間平均値をとり、1997年3月を100とする指数に置き換えて比較しやすくして推移を追っている。一目瞭然、最新の今年6月では消費者物価105に対し、月収は94、GDPデフレーターは89と下回っている。要するに物価は上がってサラリーマンの平均月収が下がっている。物価上昇分を加味した実質では25年前よりも11%も収入が少なくなっている。
中国のほうは国民1人当たりの所得は日本の3分の1程度だが、上海などの中間層の収入は日本人の平均所得を上回っているとの見方も多い。しかも、中国の働き手の収入は年々増え続けているのに対し、日本はグラフが示すように長期的には下落トレンドから抜け出せない。2012年末からのアベノミクスで上向いたものの、力強さに欠ける。
その理由を説明できるのがGDPデフレーターである。GDPは国内でのモノやサービスの産出総額から、投入コスト総額を差し引いた付加価値、企業で言えば「粗利」に相当する。GDPデフレーターは投入、産出のそれぞれの価格の変動を反映する。
エネルギー、食糧などの輸入価格は国際市況上昇に加え、円安でさらに上がる。生産のための投入コストは大きく増える。企業や農家がそのコスト上昇分を出荷価格に転嫁すれば産出総額はその分上昇する結果、消費者物価が跳ね上がる。ところが十分に転嫁できないのだから、GDPデフレーターの上昇率と消費者物価の上昇率の乖離(かいり)がひどくなる。
企業が投入コスト上昇分を転嫁できないと収益率が下がる。企業はそこでまず賃上げを渋る。家計の所得は増えないのに、物価上昇のために窮迫する。企業は需要全体が萎縮するので、賃上げできない。これが日本のデフレ経済である。赤羽で「客引き」中国人女性に「なんて貧乏なの」とあきれられるわけだ。
(産経新聞特別記者・田村秀男)
このブログへのコメントは muragonにログインするか、
SNSアカウントを使用してください。