日本人のお金4500億円が紙切れに?(国際政治学者 藤井厳喜)

■日本はどれくらいロシアに投資してきたのか
ロシアと共同開発を進め、日本企業も投資していた石油・ガス複合開発事業、サハリン2。そのサハリン2の運営会社「サハリンエネルギー」は、以下の4社が出資しています。
・ロシア国営会社のガスプロム
・イギリスのシェル社
・三井物産
・三菱商事
しかし、設立してからどれくらいお金を投資してきたのか、という話はあまり出てきていません。
今年のロイターの3月4日の記事でも、正確な数値は出ていませんが、三菱商事は2,000億円単位、井物産も2,500億円単位ではないかと言われています。
■総額4,500億円が一瞬でゼロ価値に
では今回の一件で、「サハリンエネルギー」はどうなってしまうのか?
日本経済新聞も言っていませんが、はっきり言うと、完全に会社を乗っ取られたわけです。ロシア政府によって接収されたと言っていいでしょう。
今まで民間ビジネスをやっていましたけど、この企業は全て国のものになりました。と言われても国が決定したことなので逆らえません。
日本はロシアに対して経済制裁をやっているのだから、報復として、国家の命令でこのお金を全て接収しますと言われて取られてしまいました。だから今までは株の価値が2,000億円、2,500億円あったけど、価値はゼロになったわけです。
三菱商事は2,000億円、三井物産は2,500億円、最低取られたことになります。そこに注ぎ込んできたお金は全部無駄だったと、博打で擦ったのと同じです。
それも日本人のお金です。もちろん今まで、儲けてきた分もあると思います。
天然ガスが毎年1,000万トン取れて、そのうち600万トンを日本向けに輸出する権利も持っていたのです。日本の液化天然ガス輸入の10%近くはここから来ていました。
安定供給できて、毎年利益が上がるわけですから、それによって三井物産も三菱商事も利益を得ていたでしょうし、2,000億円、2,500億円全て損したとは言えません。
しかし、とても初期に投資したお金を全て回収できるほど儲けていなかったでしょう。こういう危険があると思ってください。
■イギリスと日本、対応の違い
一方、イギリスのシェルは2月末には撤退方針を明らかにしていました。
これは戦争が起きた途端に維持できないと判断したからです。もちろん、ただ撤退するだけではお金を回収できないので、インドのエネルギー企業連合に権益(株券の分)を売却する交渉を進めているそうです。インドの企業は僅かな額でもシェルから株券を買えば、そこで自分の国に輸入できる権利も出てくるということでしょう。
日本も、ロシア経済制裁を始めた時にこうなることは予測できたわけです。しかし、それを粘って天然ガス輸入は大事だから最後まで諦めないと言っていました。
諦めないと言っても、プーチンがこれを取ると決めたら取られてしまいます。だから今更文句を言っても何も変わりません。
モスクワの仲裁裁判所に申し込んでも、向こうの司法で対応するのですから、どうしようもありません。
三井物産も、三菱商事も、企業としては大損することになってしまいます。これが厳しい世界の常識であり現実です。
■サハリン2から日本人が学ぶこと
これはロシアだけではなく、チャイナ投資も同じことではないでしょうか。
何百億円投じて作った最新鋭の自動車工場でも様々なハイテク企業の製造工場でも、チャイナで中国共産党政府が接収すると言えばおしまいです。
「我が国に反抗した企業である」とか、「スパイ行為を働いた」とか難癖をつけられて、当然そういった行為をしていなくても通用しません。
初めはチャイナの方から来てほしい、工場作ってほしいなどと三拝九拝していました。
しかし、向こうの立場が優位になってしまい、「これを接収します。チャイナの国内法に従って合法です」と言われたら、日本企業はどうしようもありません。
私はそのうち全部取られると思います。その時は人質も取れてしまうわけです。
向こうにいる駐在員とかその家族もいますが、その人たちも命があって帰って来られるだけでもいいだろうということになると思います。
そうなった時に生きて帰って来れるのか、安全に帰って来れるのかも分かりません。
せめて家族だけでも早く帰しておいた方がいいと、私はずっと言い続けているんですけど、いつ何をされてもおかしくありません。
チャイナの方がもっとロシアより怖いです。日本に対して直接領土を取ると主張しています。そういう国と安心して経済上のお付き合いはできないのではないでしょうか。
(国際政治学者:藤井厳喜)
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