気球と地震と戦争と 【鍛冶俊樹の軍事ジャーナル(2023年2月20日号)】
4日に、米軍は中国のスパイ気球をサウスカロライナ沖で撃墜したが、この影響は驚くほど大きい。そもそも米軍は気球撃墜に乗り気でなかった。スパイが米国に入国した場合を考えれば、この理由は明らかだろう。
スパイが入国しても、情報当局は直ちに逮捕したりはしない。監視下に置いて泳がせて、誰と接触し、どこと連絡を取るかを探れば、敵の情報網の全貌を把握できるからである。
スパイ気球も同じこと、中国が幾度も送り込んでいるのを、米軍は気付かぬふりをして監視していたのである。
ところが民間の研究者がこれに気が付き公表したため、米国内で大騒ぎになって、米軍は撃墜せざるを得なくなったのだ。撃墜のシーンは、気球が爆発する瞬間の映像が日本のテレビではカットされているが、海外では堂々と公開されている。
米国の勝利、中国の敗北を印象付ける映像であり、中国共産党は屈辱のあまり、対話の扉を閉ざしたばかりか、明確にロシア側に付いてしまった。
これに呼応したのが北朝鮮である。中国は北朝鮮を抑えていたのだが、その抑制をはずして、ICBM発射となったわけだ。
さらに間の悪いことに6日にトルコ南部で大地震が発生した。
トルコはウクライナとロシアを仲介できる唯一の国であったが、この大地震への対応でエルドアン政権はもはや仲介する余裕を失ってしまった。従ってウクライナでの停戦の見込みはなくなり、中国の支援でロシアは長期戦が可能になり、北朝鮮対応でバイデン政権は足を取られることになる。
第2次世界大戦は1939年に欧州で始まったが、1941年末にアジア太平洋に拡大した。現状との酷似は明らかだろう。
欧州での戦争がアジア太平洋に拡大しようとしている。一口で言うなら第3次世界大戦に近づきつつあるのである。
<軍事ジャーナリスト 鍛冶俊樹>
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