AI強気相場はまもなく終わる LLMの実験は、捏造、誤謬、反復と、ちょっと期待外れだった(宮崎正弘国際情勢)
2023年後半から沸騰したAIバブル相場は、株式市場を異様な高みにまで牽引した。AI関連企業はS&P500の市場上昇分の75%、企業利益の80%、設備投資の95%を占めるに至った。
“マグ7”(Nvidia、Microsoft、Apple、Meta、Amazon、Alphabet、Tesla)の利益は過去3年間で倍増し、これらの企業の時価総額は3倍になった。
この間、議論のあり方が大きく変貌したことに留意すべきだろう。
すなわち「使うのは人間」というAIが、「ソフト利用の主役がAIに移り始めた」ことである。これは株投資家のテーマが“マグ7”から、次へと繋がる可能性がある。
議論は、AI技術革命の最高レベルで繰り広げられてきた。ヤン・ルカン(チューリング賞受賞者)はMetaのAI研究室を率いた。ルカンとMETAの創設者兼CEOであるマーク・ザッカーバーグは、AIベースの大規模言語モデル(LLM)が人間のように推論できるようになるかどうかについて意見が対立していた。ザッカーバーグは「できるようになる」と信じていたが、ルカンはそうはならないと信じていた。
そしてルカンはMetaを去った。これは、Metaが「思考する」AIという目標を追求する中で、間違った方向に向かっていると判断したことを示唆している。
AIに関する議論の中で浮上している問題の一つに、AIによる「幻覚」の存在がある。
LLMはトレーニングデータから学習したパターンに基づいて、統計的に最も妥当な単語やフレーズを予測する。事実確認の仕組みは組み込まれていないため、検証済みのデータベースで「調べる」ことがない。このため難解なこと、曖昧なこと、またはトレーニング範囲外のことについて質問されると間違った回答をする傾向がある。
(1) 引用文献の捏造 ─ 存在しないもっともらしい論文、著者、URLをでっち上げる。
(2) 実在の人物に関する伝記的詳細を誤って記載したり、統計や日付を誤って記憶する。
(3) 訴訟事件、歴史的出来事、または製品仕様を捏造する。
(4) プロセスを誤って自信を持って説明する。
まさにLLMが、別のLLM(ラテンアメリカ系薬物乱用者)に蔓延しており、幻覚の発生率は15%から52%に及んでいるという。
▼問題点は「AIが創造的ではない」ことだ
こうなると企業環境でAIを効果的に活用できるのは、AIモデルと議論する対象分野の専門家だけになる。なぜならAIモデルが的確な洞察やアイデアを提供しているのか、それとも回答の重要な部分を捏造しているのかを判断できるのは専門家だけだからだ。
つぎの問題点は「AIが創造的ではない」ことである。
スタンフォード大学の研究者たちは、複数のAIモデルに対して、自由回答形式の質問(正解が一つではない質問)を投げかける研究を行った。2万6000回も繰り返した。
当初、研究者たちは2つのことを予想していた。
自由回答形式の質問をされるたびに、毎回異なる回答を生成する特定のAIモデル。異なるAIモデルは、それぞれ異なる回答を導き出すが実際には正反対のことが起こった。AIモデルは、自由回答形式の質問に対して毎回同じ回答を返すだろう。異なるAIモデルが最終的に同じ解決策を導き出した 。
この論文は、AIが実際には「集合知」、つまり均質な思考に陥っていると結論付けている。AIは多様で創造的な回答を提供するどころか、異なるモデル間でも非常に退屈で反復的な回答しか提供しないのである。
株式市場が、少なくとも現状のAIは投資家が期待する ような潜在力には到底及ばないという事実を織り込み始めるのは時間の問題だろう。つまりAI関連株の大幅な価格 下落につながる可能性を示唆している。株価がこのリスクに基づいて単純に再評価されるとすれば、株式相場には大きな調整局面(即ち大下落)が展開するだろうし、AIが期待外れに終わり、米国経済が再びインフレの波に見舞われ(それによってFRBによる追加金融緩和の望みが絶たれる)、あるいはさらに悪いことに景気後退に陥った場合、弱気相場が到来するだろう。
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