東アジア歴史文化研究会のブログ

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『インテリジェンスで読む日中戦争』山内智恵子著・江崎道朗監修(ワニブックス) アメリカの研究家がスパイ戦争の真実をえぐり出した 大東亜戦争の背後:米国、ソ連、英国、毛沢東、蒋介石のすさまじい駆け引き

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インテリジェンス戦争の視点から第二次世界大戦、とくに日中戦争を捉え直してみると、歴史の真実は教科書でならったこととまるで異なる。

事実は小説よりも奇なり。目がテンになる読者も多いことだろう。

列強のスパイ戦争の真実とは、米ソ、英国、そして毛沢東、蒋介石のすさまじい駆け引きがあり、その間に挟まったアメリカ人軍人たちの縄張り争いと作戦の是非をめぐる路線対立があった。

通常の思考では考えられない諜報工作が舞台裏で展開されていた。CIAの前身はOSS(社会主義者の巣窟だった)、スターリンはコミンテルン、そして蒋介石は藍衣社ほか、毛沢東は米英とソ連ばかりか国民党に大量のスパイを潜り込ませていた。欺しあい、内部の意見対立、英米の対中支援、軍事援助の実態は、通史と異なる。

この時点での米国の諜報能力は英国、ソ連、中国に比較すると劣っていた。CIAの発足は戦後、1947年である。諜報工作の足りなさの反省から生まれた。OSSは1942年にドノバンをトップに発足したが、後にソ連スパイとわかるノーマンやタイシルクのビジネスで当てたジム・トンプソン等もメンバーだった。

米国は蒋介石が嫌いなスティルウェルを中国戦線へ送り込み、彼がやったことは蒋介石軍を結果的に弱らせてしまった。

「スティルウェルが武器貸与法物資の分配と管理の権限を握っていた」(66p)。このため蒋介石とは甚大な対立関係となり、また長引いたため、作戦上、不利な条件が積み重なっていく。

スティルウェルの銅像を湖南省でみたことがある。かれを顕彰するのは蒋介石の軍事力を弱めてくれた結果だから、中国共産党が評価するのは当然だろう。かれは蒋介石を嫌う一方で、スメドレーと親しく、八路軍は素晴らしいと報告していた。あまりにも的外れだが、途中で異常にきがついた米国はウェデマイアーと交代させる。ウェデマイヤーが引き継ぎに行くとスティルウェルは引き継ぎもせずに去ったあとで、書類もなかった。

その後、マーシャルがやってくる。米軍の援助体制は内部対立激しくはちゃめちゃだった。武器援助は巧妙に蒋介石に渡らず、毛沢東のゲリラ側へ運ばれた。国民党軍幹部の横流しだけではなかった。

ウェデマイヤーは警告したが、米軍上層部は握りつぶした。

蒋介石は日本との軍事衝突の後、共産党を殲滅して中国を統一する戦略に基づいているが、そのために武器を貯蔵したことも事実だったが、アメリカは単に日本をまかすために蒋介石を援助しているに過ぎない。両者の思惑のずれが顕著だった。

フライングタイガーにしてもちぐはぐな対応から生まれた。

「(開戦前の)1941年4月、ルーズヴェルト大統領の補佐官ロークリン・カリーの計らいによって、陸海軍航空隊や海兵隊航空団の退役軍人によるアメリカ義勇軍」(62p)

が発足した。

フライングタイガーは米軍義勇兵とされたが、事実上の隊長はシェンノートであり、この本には書かれていないが評者湖南省奥地のフライングタイガー記念館を訪問したおりの写真やパネル展示、文書などから、「くの一」にやられたのかと思った。シェンノート夫人は中国人女性だった。

シェンノートとスティルウェルとは犬猿の仲だった。蒋介石はシェンノートの航空戦闘力を高く評価し信頼していた。

その後の『ヴェノナ文書』によって、大統領補佐官のカリーもソ連のエージェントだったことが分かっている。

英国は独自の、アメリカの工作を馬鹿にするかのように勝手な通信網を築く一方で、英国だけの利益に沿った活動を展開した。怒った蒋介石は彼らを追い出した。

この本を現在進行中のウクライナ戦争を見ながら読むと、つぎつぎと連想が広がる。

ロシア軍は作戦遂行に司令部が不在で、ちぐはぐな作戦が緒線でめだったうえ。情報が間違っていたようで部隊、兵器の投入を間違えた。

ゲラシモフ参謀総長のハイブリッド作戦はクリミア併合で成功したが、こんどはウクライナが英米の戦争PR会社や心理戦争の専門家に助けられ、むしろ宣伝戦はウクライナがリードした。

しかしウクライナ軍は、統合の作戦が成立していない。アゾフ連隊などが独自の闘い、軍事素人のゼレンスキー大統領には統率力がない。欧米からの武器はちゃんと戦闘現場に届いていない。

英米の思惑は情報と武器の提供、ポーランドのNATO基地などにおけるウクライナ兵の特訓などが挙げられるが、フライングタイガーのように「志願」を装った特殊部隊が、現場で主導している。こうした伝えられていないウクライナ内部の事実は戦争がおわってから明らかになるだろう。

NATO主要国はアリバイ証明的に武器を送るが、むしろ難民援助に力点を置いている。鵺的行動に出ているのがトルコとイスラエル、なんとしても巻き込まれたくないのがベラルーシとカザフスタンという構造だが、ちょっと待った。徹底的に米ロ、ウクライナ、そしてNATOの消耗をにやにやしながら傍観しているのが中国ではないのか。

まるで往時の毛沢東が選択した戦術である。それを「持久戦」などと美辞麗句を後でひっつけたが、ようするに米英と蒋介石をみごとに欺したのだ。日本軍と蒋介石を疲れ果てるまで撤退的に戦わせて国民党の消耗をひたすら待っていたのが毛沢東率いる中国共産党だった。

ウクライナ戦争でも、米英とNATO諸国の疲労をじっとまっている中国。ロシアが救援を求めるほどの窮状に陥ると、中国はロシアに対してもえげつない要求を出すだろう。

▲まちがいだらけの戦後歴史教科書

日本の戦後教科書は関東軍が「満州に侵略した」のであり、張作霖爆殺は河本大作の仕業であり、盧溝橋事件は、日本があそこに侵略軍としていたからだ等と教えている。

いずれも間違いである。

第一に満州帝国は世界の多くが承認していたし、張作霖爆殺はソ連の謀略だった。盧溝橋事件は、日本軍がPKO(平和維持軍)として駐在していたのであって、中国共産党が仕掛けた発砲で、日本は泥沼に引きずり込まれたのである。

英米は蒋介石に肩入れしていた筈だった。英米がウクライナに代理戦争をやらせているように、日中戦争は、英米ソ連がしかけた代理戦争だった。日本と中国の間の戦争ではなかったのである。

アメリカ人は日本が侵略者だったと教えられ、真珠湾はだまし討ち、広島・長崎は戦争をはやく終わらせるために仕方のない選択だったと信じている。

多くはルーズヴェルトの謀略も知らないし、五十以上の都市への無差別焼夷弾爆撃で五十万人以上の日本人非戦闘員が虐殺された事実をスルーするばかりか、スビック

で降伏したアメリカ兵捕虜を歩かせたことを「死の行進」だったとすり替え日本を非難する。フィリピンの死の行進のコースは僅か80キロ。沿道ではおにぎりも用意され、カフェブレークもあった。のろのろと「散歩」に近いもので、日本軍は武士道による処遇をしたのだ。米国は自らの非人道的虐殺を蔽い隠すためにパターン死の行進とか、南京大虐殺とかを創作し、自らの戦争犯罪にほおかむりした。

南京大虐殺は米国が仕組んだ嘘放送、中国共産党はしめたとばかりに、この偽報道によるでっち上げを悪用して、中国人民を洗脳している。日本を貶め、武士道精神を奪い、日本が再び立ち上がれないようにするWGIPの洗脳は日本でも最大効果を上げた。シナ人が騒ぐ前に日本のメディアが靖国参拝の政治家に「私的ですか、公務ですか?」などと愚かな質問をしている。つまり、この戦後の工作では米中が共通の利益であった。

▲バイデンは戦略的発想ができない政治家のようだ

戦後も一貫して米国は中国の扱いを間違えた。経済的に豊かになれば中国は民主化するなどと、アメリカは信じて中国に惜しみない協力をなし、中国が民主化することは幻想で、経済繁栄でえた資力のすべて軍拡に使い。米国と敵対している真実にいまごろ気がついたというわけだ。

オバマ政権まで米国は中国を戦略的パートナーだと言いつのり、あげくにステークホルダー。いや「G2」だと叫んでいた。

2015年のペンタゴン報告は「協力と注視」と記述しただけだった。2017年、トランプの登場によって、目が開かれた。

「中国は米国の価値観、利益の対極にあるライバル」として対中外交を転換させ、2020年にはペンス副大統領演説、そしてポンペオ演説へと続き、「正面の敵」となった。

従来の「関与政策」は誤りであり中国は自らのイデオロギーで国際秩序に挑戦していると認定するに至った。過去の政策が「誤り」だったというのだから、百八十度転換、しかもバイデンは報復関税、ウイグル族への弾圧はジェノサイド、スパイ摘発、ウォール街からの中国企業の締め出し等の対中路線を「継続する」とした。

しからば、ウクライナ戦争のパターンに戻ると、バイデンの決定的な戦略的誤謬が露呈する。

中国を主要敵としたのだから、その背後にあるロシアを中国包囲の味方に取り入れるべきだろう。ところがバイデンは逆にロシアを敵視し、むしろロシアを中国側へ追いやってしまった。

大戦略がない、というよりバイデンを囲むブレーンらが、戦前のホワイトハウスがソ連のスパイだらけだったように、見えない謀略によって誤った方向へ暴走を始めた。だから中国は笑いが止まらないのである。

さて本書の基軸となった弐冊の本がある。ポンペオ前国務長官のブレ−ンでもあったマイルズ・マオチュン・ユ教授が書いた『龍の戦争』と『中国のOSS──冷戦の序曲』だ。

ユ教授は次の五点を指摘した。

一、米国の蒋介石支援は経済的にも軍事的にも不足した
二、蒋介石と米国と英国の対中戦略に大きな齟齬があった
三、米国政府内、中国国内工作において敵側スパイの工作を黙認した
四、ホワイトハウス、米軍、米国務省、OSS(CIAの前身)というインテリジェンス機関の指揮系統の混乱、内ゲバなどで米国の工作が自滅した
五、米国政府は蒋介石政権のことも中国共産党の内部事情もよく承知せず、中国情報は太平洋問題調査会という民間シンクタンクに丸投げしていた

ウクライナに戻るが、米英間のインテリジェンスは相互乗り入れとは言え、おたがいに大事な情報を完全開示していない。NATOは内部で疑心暗鬼甚だしく、お互いが腹の底を探り合いながら武器供与を小出しにしている。

そのうえタイミングを間違えている。

ゼレンスキー政権も譲歩工作に疎く、また米英に正確な情報を挙げてこなくなった。戦果は大本営発表であり、これがしばしば英米に誤断をもたらす。プーチンをとことんやっつけると言っていたバイデンは五月以後、まったくのトーンダウンで「いずれ話し合いだ」とキッシンジャー流の妥協路線に大きく後退しており、こうなるとゼレンスキーとの間にすきま風が吹く。

中国は関与国のすべてが疲労困憊したタイミングを待って大規模な台湾侵攻をやらかす可能性が日々強まったのではないか。

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■米国の対中強硬政策を支える
最新の日中戦争研究
■ポンペオ国務長官のアドバイザーをしていたユ教授の「日中戦争」論

■対中支援、戦略、工作員、組織同士の争い
■PKO(平和維持活動)活動だった支那事変(日中戦争)が泥沼になったわけ
そもそも日中戦争は「日本と中国の戦い」ではなかった

●対中「関与」政策は「誤りだった」と認めた米国
日本では、防衛研究所が中国人民解放軍の動向について『中国安全保障レポート』をまとめるなど、軍事研究は進んでいますが、経済や人権、宗教など他の分野については必ずしも十分とは言えない状況です。また、民間シンクタンクとの連携も米国に比べれば、不十分だと言わざるを得ません。
米国の対外政策、対中政策は、日本の命運に関わってくるのです。表層的な理解で終わっていいはずがありません。よって日本としては、中国について独自の分析をするだけでなく、同盟国米国の対中戦略について徹底的に調査・分析を行い、問題があれば是正するよう働きかけるべきなのです。
その調査・分析に際して、ポンペオ国務長官のアドバイザーをしていたユ教授の「日中戦争」論を分かりやすく解説した本書は、多くの示唆を我々に与えてくれるに違いありません。
(「発刊に寄せて 評論家」 江崎道朗)より

■日中戦争の総括を踏まえた対中戦略
中国におけるアメリカのインテリジェンス敗戦
アメリカとイギリスの対中政策が根本的に異なっていた
中国共産党を太らせた米陸軍司令部の中共協力者たち
中華民国の戦時経済を破壊した米財務省工作員たち
インテリジェンス協力を持ちかけながら中国の裏をかく

監修 江崎道朗(えざき・みちお)
評論家。1962年(昭和37年)東京都生まれ。
九州大学文学部哲学科卒業後、月刊誌編集、団体職員、国会議員政策スタッフなどを経て2016年夏から本格的に評論活動を開始。主な研究テーマは近現代史、外交・安全保障、インテリジェンスなど。社団法人日本戦略研究フォーラム政策提言委員。産経新聞「正論」執筆メンバー。2020年フジサンケイグループ第20回正論新風賞受賞。同年、倉山満氏らとともに「一般社団法人 救国シンクタンク」を設立、理事に就任。
主な著書に『アメリカ側から見た東京裁判史観の虚妄』(祥伝社新書)、『コミンテルンの謀略と日本の敗戦』(第27回山本七平賞最終候補作、PHP新書)、『日本占領と「敗戦革命」の危機』(PHP新書)、『日本は誰と戦ったのか』(第1回アパ日本再興大賞受賞作、ワニブックス)、『フリーダム』(展転社)、『天皇家百五十年の戦い』(ビジネス社)、『日本外務省はソ連の対米工作を知っていた』(育鵬社)、『インテリジェンスと保守自由主義』(青林堂)『日本人が知らない近現代史の虚妄』 (SB新書)『インテリジェンスで読み解く 米中と経済安保』(扶桑社)など多数。
ツイッター @ezakimichio

著者 山内智恵子(やまのうち・ちえこ)
1957年(昭和32年)東京生まれ。国際基督教大学卒業。津田塾大学博士後期課程満期退学。日本IBM株式会社東京基礎研究所を経て現在英語講師。近年は、アメリカのインテリジェンス・ヒストリー(情報史学)や日米の近現代史に関して研究し、各国の専門書の一部を邦訳する作業に従事している。著書に『ミトロヒン文書 KGB(ソ連)・工作の近現代史』(監修;江崎道朗 ワニブックス)がある。