東アジア歴史文化研究会のブログ

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【お金は知っている】 お金を刷れば景気は良くなるか ノーベル経済学賞受賞「バーナンキ型政策」を〝不発〟に追い込んだ緊縮日本

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思い出したのが、20年ほど前、東京・西武池袋線の電車内での親子の会話で、当時の産経新聞の拙コラムで紹介した。内容は、いかにも賢そうな中学生の男の子が父親に向かい、「ねえ、お父さん、景気が悪かったらおカネをじゃんじゃん刷ればいいんじゃない?」。

この子のような考えを実践したのが2008年9月のリーマン・ショック当時、FRB議長だったバーナンキ氏。一蹴したのが日銀総裁だった白川方明(まさあき)氏である。

学究肌の白川氏は日銀理事時代の03年、バーナンキ氏から日銀政策の誤りを厳しく指弾されたことがあり、強く反発してきた。バーナンキ氏のノーベル賞受賞決定に白川氏はどう反応したか。

日本経済新聞10月12日付朝刊は白川氏の寄稿を掲載、見出しは「2%目標・量的緩和、評価割れる」。日経は同日の別の解説記事でも「バーナンキ氏が残した『負債』 バブル連鎖の解見えず」と、バーナンキ理論が金融バブルを引き起こしたかのような書き振りで、白川氏寄りの論調で一貫している。

さまざまな評価があって当然だが、政策は結果が全てだ。米国と日本の金融経済が実際にどうなったか。

グラフは米、日の中央銀行資金発行高を名目国内総生産(GDP)、株価について、リーマン・ショック勃発時の2008年9月の数値をそれぞれ100として推移を追った。FRBは14年まで3度にわたる量的緩和を行い、ドル資金発行量は14年に3・8倍以上に膨らんだ。

効果が最もめざましいのは株価である。GDPは落ち込まず、消費者物価は10年から極めて緩やかに上昇し始めた。物価が下がり続けるデフレを免れたし、金融不安を招いた住宅相場は11年に底を打った。

20年の新型コロナ危機を受けて、FRBは政府の財政支出拡大に合わせて量的緩和を再開した。21年からは物価や住宅価格の上昇が目立つ。物価はエネルギー価格の高騰が響いているが、賃金も上がるので、景気は熱を帯びたままだ。

日銀は、白川総裁時代(08年4月~13年3月)、リーマン・ショック後にバーナンキFRBの量的緩和を横目に見ながら無為無策で通した。11年3月の東日本大震災時も資金増発は最小限にとどめた。結果はいずれも超円高であり、デフレ不況を進めた。

13年3月に就任した黒田東彦(はるひこ)総裁は一転して、異次元金融緩和政策に踏み切った。その中核はバーナンキ型量的緩和である。最も成果がめざましいのは米国と同じく株価上昇である。白川時代の円高が是正され、企業の国際競争力が回復に向かった。

金融市場に流し込まれたカネは株式、さらに海外市場へと流れ、ドルに転換されて米金融市場を潤す。実体経済面では求人倍率が急上昇し、就職氷河期を終わらせた。

だが、デフレ圧力は去らず、内需不振だ。主因は消費税増税と緊縮財政であり、バーナンキ型政策を不発に追い込んだ。金融偏重に過ぎたのだ。

(産経新聞特別記者・田村秀男)