アメリカはなぜ「ラピダス」の支援に方向転換したのか TSMCと中国の関係にカントリィリスクを見いだした?(宮崎正弘国際情勢解題)
わが国の半導体産業の凋落原因はアメリカが仕掛けた。。
第一に日米通商摩擦の犠牲となった。クルマの『自主規制』につづいて半導体が米国の攻撃目標とされ、「日米半導体協定」を無理矢理締結させられ、手足をもがれた。
日本の半導体産業は二十年前に米国によって潰された。議会に働きかけて日本の競争力を弱体化させようと水面下のロビィ活動を展開したのが1977年に設立された「米国半導体協会」である。この組織が黒幕だった。
第二に米国が先端技術を日本の頭越しに韓国と台湾へ供与し、奨励したこと。あきらかに日本の競争力を衰退させる目的だった。言いがかりに近いダンピング提訴もさりながら、日本が課せられた数値目標が大きな障害となった。米国はこれで日本は再び立ち上がれまいとほくそ笑んだ。 まるで戦後GHQの日本非武装化と同じ発想だったのだ。
第三にアナログからデジタルへの変換がおきていたが、既存の業績に振り回された日本企業の対応が遅れた。日本は高品質にこだわってデジタル方面の対応が後手に回った。日本の電化製品が世界的ベストセラーとなっていて経営者には「その次」を真剣に考える余裕もなかった。
第四にビジネスモデルの変更である。たとえばデジタルカメラのブームは忽然と去ってスマホの画像がデジタルカメラより高画素となった。スマホとパソコンの商戦で日本がシェア拡大競争に明け暮れている間に生産方面はまったく乗り遅れた。
第五に「失われた二十年」が三十年となって、日本企業は新分野への開拓を怠り、内部留保の積み上げに明け暮れ、次の技術研究と開発に消極的だった。エンジニア重視の伝統が希薄となった。国産ロケット「イプシロン」の打ち上げ連続失敗を見よ。
ところが大変化が起きた。
米国の対中制裁の眼目はハイテク封鎖である。それが各方面に波及し、AIを最優先する開発競争の変化は、世界戦略と絡んで日本重視政策が急激に浮上した。
かくて、日本の半導体を壊滅させた米国が、ころりと態度を変えて、次世代半導体の2ナノを日本がつくるためにラピダスに協力的となり、TSMCを警戒し始めた。韓国の半導体メーカーの中国進出を欣快とせず、イスラエルとインドへの投資を大がかりにし始めたこと。この動きを捉えて日本政府は、およそ2兆円の半導体補助金をつける方針を固めたのである。
半導体を単に技術開発レベルの狭窄な視野で論じては「木を見て森を見ない」類いとなる。
詳しくは拙著新刊『半導体戦争 中国敗北後の日本と世界』(宝島社)で。
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