【安倍外交の課題④】日本の命運握る「ロシアカード」 米国とタフに交渉続けるプーチン氏

2015.11.13
安倍首相(左)と、プーチン大統領は波長が合うという=9月、米ニューヨークの国連本部(共同)
★(4)
安倍晋三政権の、外交でのトップ・アジェンダ(課題)はロシアである。何としても、来年にはプーチン大統領の訪日を実現させたい。
日本は、欧米各国とともにウクライナ問題で対ロ制裁を行った。しかも同盟国の米国がプーチン氏の訪日に反対した。米国としては、ロシアとの熾烈なパワーゲームを繰り広げるなか、日本という予定調和外の要因を入れたくない。そのため、プーチン氏の訪日は来年に延期された。
ロシアは、安倍戦略外交の幅を広げるための、重要なカードとなる。中国が南シナ海への膨張路線を突き進むなかで、日本は「対ロ外交」と「対中外交」を連動させて、バランスを取れる。
そのような日本のジレンマを、プーチン氏は十分読んでいる。9月の国連総会に合わせた日露首脳会談で、プーチン氏は満面の笑みを浮かべて安倍首相と会った。
米経済誌フォーブスは今月初め、「世界で最も影響力のある人物」のランキングで、プーチン氏を3年連続で第1位に選んだ。影響力というより、要するに「世界を振り回した人物」ということである。
プーチン氏は、ウクライナ問題で険悪になった米国との関係改善に意欲を見せ、10年ぶりに国連総会に出席して演説を行った。シリア問題では、アサド大統領を支援するための空爆を行う一方、ウィーンでの多国間協議にイランを招待して、その外交力を誇示した。
ロシアの空爆でIS(イスラム国)が追い詰められるなか、ロシアの旅客機が10月31日、エジプト東部シナイ半島で墜落し、乗員・乗客224人が全員死亡した。直後にISが犯行声明を出した。これが本当であれば、ロシアへの報復テロとなり、ロシアはISとの戦いに引きずり込まれる。
ロシア当局は墜落原因の究明に向けて、米連邦捜査局(FBI)に協力を要請し、米国側もこれに応じる姿勢を示している。
外交上、米露関係は険悪に見えるが、インテリジェンスの世界では緊密な協力関係を続けている。テロリストは、共通の敵だからだ。ソチ冬季五輪では、FBIはロシアに協力し、ボストン・マラソン爆弾テロ事件では、ロシアは早くから米国に容疑者情報を提供し、警告を行っていた。
プーチン氏はこうした協力関係を微塵も見せず、オバマ氏とタフな外交交渉を展開する。やはり並みの力量ではない。
米露関係を機軸にシリア情勢は変動している。そのダイナミックな変動のなかで、安倍首相は「ロシアカード」をつかむことができるのか。そして、自らパワー・ポリティクスのプレーヤーとなるのか-。国家の命運を賭けた外交が展開される。
川上高司 拓殖大学海外事情研究所所長
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