戦場はサイバー空間(インターネット、ツィッター、FB)に移行した 米軍幹部「認識戦争」を台湾は「認識域戦争」と命名している(宮崎正弘国際情勢解題)

中国のサイバー軍の詳細を西側は掴みきれていない。作戦方法も複雑多岐に亘り、詳細を極める調査は、CIA、NSAが行っただろうが、公表されていない。
従来、上海にある12階建ての妖しいビルに数千人のサイバー専門家がつどう事実が特定され、中国人民解放軍総参謀部所属の61398部隊、ハッカー要員はおよそ五万名と推定されてきた。
指令に基づいた書き込みを下請けするハッカー要員はアルバイト学生、退役軍人らおよそ二百万人。これらは「五毛幇」と呼ばれることは広く知れ渡っている。
しかし福建省にあると推定される別のサイバー部隊は人民解放軍の311基地所属の「61716部隊」と推定されているのだが詳細が不明。これは総政治部所属(現在の戦略支援組)で対台湾向けの心理戦、宣伝戦を仕掛ける拠点とされる。この存在が台湾の情報機関によって明らかにされた。
2016年の大統領選挙でロシアはハイブリッド作戦を展開し、SNS、ツィッター、フェイズブックを駆使し、巧妙な意見を書き込むなり、嘘ニュースを流して米国選挙を攪乱した。狙いはヒラリー当選を阻止することにあった(廣瀬陽子『プーチンのハイブリッド戦争』、講談社)。
米国情報筋は中国、露西亜のSNS浸透作戦による相手国のマインド・コントロールを「認知作戦」(COGNITIVE OPERATION)と呼称しはじめた。
台湾は「認知域作戦」(COGNITIVE DOMAIN OPERATION)と、もうすこし細かな議論に発展させている。
この61716部隊が台湾選挙に介入したのである。 ロシアのやり方を教訓としたのかどうかは定かではないが、2018年の台湾五大市長選挙、そして2020年の総統選挙に、偽情報の流布、デマ放送、これらをSNSネットワークを通じて大量に流した。
くわえて中国華芸広播公司はテレビ、ラジオによる宣伝戦の尖兵となった。狙いは台湾国民の心理陽動、攪乱情報のみならず、高等で高尚な意見を装ってオピニオン・リーダーの意見を変えさせようとしたのだ。
つまり「概念を構築する方法を変える」のが究極の目的であり、「違う概念をそれとなく植え付ける」のである。それによって大衆世論を誘導し、それがオピニオン・リーダーに影響を与えるようにしむけるという手の込んだ作戦だ。まわりくどいが、狙いは政策決定に大きな影響力をもつオピニオン・リーダーの概念構築(認識能力に影響を与える)のである。
典型の成功例は日本を見れば分かるではないか。GHQの強制が基軸となったが、そこに悪のりして東京裁判史観で自虐的になった日本のオピニオン・リーダーに中国は巨大な認識の変更を工作した。すなわち大東亜戦争は太平洋戦争、南京大虐殺はあった。疫病対策の731部隊は生体実験をした。日支事変は日中戦争(十五年戦争)等々。
こうして日本の政官界、ジャーナリズムからアカデミズムの指導層、財界に「贖罪意識」をまんまと植え付け、心理戦で日本人を圧倒して、中国への賠償に匹敵する援助を引き出し6兆円を収奪し、あまつさえ日本企業の大量進出を促した。
この基本的なやり方を「サイバー空間「」に移行したということである。
▲オピニオン・リーダーの概念構築を変える高等戦術、さすが孫子の末裔
外に向かってがなり立てる政治宣伝より、内部の議論に違う概念を植え付ける認識域への浸透作戦ではアウトプットよりインプット重視になる。
既存のメディアより、台湾ではSNS空間に情報が飛び交っている。米国も韓国も、いや日本の若者たちもそうだ。驚くなかれミャンマーもそうなった。既存のメディア報道を信じない大衆が増えれば増えるほどに、SNSを通じた作戦のほうが効果的であり、とくに台湾へは統一問題、両岸関係をいかに発展させるかを、政府の方針とは気付かないうちに乖離させるわけだ。
一見迂回路をたどるように見えるが台湾政府の台湾独立路線は鮮明に大きく後退している事実は何を物語るか。そして2018年、民進党の牙城だった高雄で国民党の韓国諭が当選するという逆転劇は、この「認識機作戦」の成功を物語る。
2020年の総統選挙に中国は韓国諭を充てるように国民党トップに示唆したのも、同じ方法で勝てると踏んだからだ。事実、2019年初夏まで、蔡英文の再選は難しいと予測されていた。
ところが台湾総統選は直前までの香港の民主運動弾圧を目撃し、大衆もすっかり冷めて、中国が全体主義の怖ろしい国家だったことに改めて気がついた。中国は自ら撒いた種で、台湾での作戦は失敗した。
さしあたって次の標的は年内に予定される日本の総選挙、台湾中間選挙。同年秋のアメリカ中間選挙である。
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