中国が直面する2つの大問題「14億の巨大人口」と「急速な少子高齢化」 穀物輸入が滞れば「食料問題」が火を噴く 大原浩氏が緊急寄稿

2021.11.14
6中総会に臨んだ習氏(中央)ら=北京(新華社=共同)
中国共産党の第19期中央委員会第6回総会(6中総会)では、党創建100年を総括する「歴史決議」を採択して閉幕した。習近平総書記(国家主席)は建国の指導者、毛沢東や改革・開放政策を推進した●(=登におおざと)小平と並ぶ地位を確立。異例の3期目入りがほぼ確実となったが、先行きは決して安泰ではないとみるのが国際投資アナリストの大原浩氏だ。大原氏は寄稿で、中国が直面する「2つの大問題」を指摘した。
中国不動産の債務危機に世界市場は身構えている。経済的繁栄よりイデオロギーを優先する“ネオ毛沢東主義”の習政権が世界経済を混乱させる可能性は否定できない。
習政権がイデオロギーで国民をまとめようとする背景には、中国が避けることのできない問題があると筆者は考える。最近の極端とも思える政策に大きな影響を与えているのは、「14億人という巨大な人口」と「急速な少子高齢化」の2つだといえる。
中国の人口は公式統計で約14億人だが、無戸籍者を入れるともっと多いといわれる。公式統計でみても1960年頃の推計6億~7億人のほぼ2倍だ。人口が多いことは国力の象徴である半面、「14億人を食べさせなければいけない」ということでもある。
国民を食べさせることに大失敗したのが、58年から61年までの毛沢東による「大躍進政策」だった。飢餓を含めて4000万人が犠牲になったという西側の推計もある。
現在の中国はどうだろうか。米、小麦、トウモロコシの3大穀物の自給率は100%近くを誇っているとされるが、にわかには信用しがたい。
西側の統計では、大豆の国内消費の85%を輸入に頼っている上、その量は10年で2倍になっている。高い自給率を誇っているはずのトウモロコシの輸入も、昨年までのたった1年間で3倍以上に増えた。全体の食料自給率は7割台に低下したとの西側推計もある。
米ドナルド・トランプ政権時代、中国は貿易戦争で、米国産穀物の購入をちらつかせて交渉していたが、実は「穀物をぜひ売ってください」とお願いする立場だったのではないだろうか。
特筆すべきは今年の4月に「食べ残し禁止法」が制定されたことである。店が食べ残した分の処分費用を客に請求することが可能になり、大食い動画の投稿も規制された。このような法律をわざわざ制定するというのは、中国の食料問題が極めて深刻、あるいはこれから深刻になることを示していると考えるべきだ。
農産物輸出国のトップは米国である。上位にはオランダ、ブラジル、ドイツ、フランス、カナダなどが並ぶ。中国はこれらの国と仲良くすべきだが、人権問題などで緊張関係の国もある。何らかの理由で穀物輸入が滞ることになれば、食料問題が火を噴くはずだ。
中国西安交通大学の研究チームは10月に「現在の出生率が持続する場合、45年後には中国の人口は現在の半分の水準の7億人にまで減少する」との調査結果を出している。これは、現在の合計特殊出生率の1・3をベースにしている。
しかし、一人っ子政策を終了しても出生率が伸びず、子供を産まない原因の一つとされる教育費の高騰を抑制するために「学習塾禁止令」を発令して大量の失業者を生み出すほどの状態だ。不動産業界を壊滅に追いやってまでも住宅価格を引き下げようとしているのも少子化対策の一環といえる。同研究チームが出生率が1・0まで低下するという前提で見積もった半減期は29年後の2050年であり、こちらの方がより現実に近いのではないだろうか。
もちろん、人口が半減するからといって、食料問題が改善するわけではない。むしろ逆で、若者を中心とした生産年齢人口が減少し、生産を行わないで消費だけを行う高齢者の比率が高まることが考えられる。
日本でも似た問題を抱えているが、中国はまだ1人当たり国内総生産(GDP)が1万ドル(日本は約4万ドル)程度であり、一部の富裕層を除けば富の蓄積ができていない。一人っ子政策による人口のゆがみがこれから重くのしかかる。
■大原浩氏(おおはら・ひろし) 人間経済科学研究所執行パートナーで国際投資アナリスト。仏クレディ・リヨネ銀行などで金融の現場に携わる。夕刊フジで「バフェットの次を行く投資術」(木曜掲載)を連載中。
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