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「中国当局に情報を抜かれる」北京五輪の出場選手に通達が出た異常事態(『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』)

東アジア歴史文化研究会

2022.01.21

【中国】北京五輪、選手の個人機器から情報抜かれる懸念、そんな国で五輪をやる矛盾

2月4日から開催される北京冬季五輪を前に、欧米の五輪委員会が選手たちに異例の助言を行いました。それは、情報が抜き取られるから、スマートフォンなど個人の機器を中国に持ち込まないようにというものでした。

中央日報によれば、オランダの現地日刊紙・フォルクスクラントは1月11日、オランダの五輪組織委員会が参加選手やスタッフに対して、個人用スマートフォンやノートパソコンを北京五輪に持ち込まないように勧告したことを伝えたそうです。1月13日付の香港明報も、ベルギーの五輪組織委員会が同様の勧告をしたことを伝えました。その他、イギリスは希望する選手やスタッフに機器を貸与、アメリカの五輪委員会もレンタルや使い捨ての機器を推奨しています。

要するに、中国は個人情報を盗む「泥棒国家」だから気をつけろと、選手に注意したということです。多くの国がそのような危惧を抱いている国で五輪を開催すること自体が、極めて異常なことだと言えるでしょう。

もちろん中国側は「事実無根」だと反発していますが、中国当局が「金盾」(グレートファイアーウォール)という検閲システムで、インターネット上の情報を監視、検閲していることは周知の事実です。中国ではフェイスブックやツイッターなどは接続できず、そしてインターネット上で政府批判などを行えば、そのサイトはすぐに遮断され、場合によっては発信者は逮捕・監禁されます。

テニス選手・彭帥(ほうすい)氏が中国の張高麗元副首相に性的関係を強要されたという暴露文をソーシャルメディアの微博(ウェイボ)上で告発したときも、アカウントはあっというまに凍結されて、暴露文はすぐに削除されました。

中国のスパイの国としての歴史は長く、『孫子』の兵法にも「用間の術」として特筆しています。「用間」とはスパイ工作のことです。ことに明の時代には皇帝の「錦衣衛」(秘密警察)をはじめ、宮廷内には宦官による東廠、そしてそれに対抗する西廠というスパイ機構がつくられました。人間不信の国ですから、スパイといえども信用されていないため、さらにスパイを監視する内行省をつくったのです。宮廷以外にも、全国の隅々にわたるまでスパイが目を光らせていましたが、それでも明は内乱で滅びました。

そのような歴史のある国ですから、すでに中国当局は、参加選手のSNSや過去の発言などを事細かく調べています。どのような思想を持っているのか、中国の人権問題や習近平体制を告発したりしないか、金ですぐなびくかどうか…。当然ながら、選手の部屋も監視され、会話などは筒抜けでしょう。

ボイス・オブ・アメリカによれば、IOCは中国と交渉し、五輪に参加する外国人選手団や取材陣が選手村や競技場で自由にインターネットサービスが利用できるよう約束を取り付けたそうです。

しかし、これらのインターネットも、もちろん中国が監視しています。また、そのインターネット網を利用してウイルスやマルウェアを機器に送り込み、写真や情報を盗み出すことも可能です。ワシントンの人権機構フリーダムハウスのアンジェリ・ダット中国担当上級研究員は、「中国が提供する無線インターネットを利用するのは一種の冒険」とし、簡単に中国当局の監視を受けかねないと警告しました(前述の中央日報)。

スマートフォンやノートパソコンに不正プログラムを送りつけられ、それをうっかり開いてしまったことで、機器を乗っ取られ、遠隔操作によって知らぬ間にスマホやノートパソコンのカメラやマイクが操作されて、盗撮・盗聴される危険性も少なくありません。

最近のスマートフォンには、エクササイズの履歴や体調管理のソフトも入っているので、そういったものを活用している選手なら、体の状態までも中国側に抜き取られる可能性があります。それらのデータやコーチとの作戦会議の会話まで盗まれる可能性があるのです。

もともと中国は冬季オリンピックはそれほど強くなく、前回の平昌五輪では金メダルは1個、メダル獲得数9個で16位でした。これが急上昇するようなら、ちょっと疑わしい目で見てしまいます。その前のソチ五輪では、ロシアは大量の金メダルを獲得しましたが、組織的なドーピングが発覚し、東京と北京五輪から除外されました。

もちろん、インターネット接続のみならず、中国国内で通話することも危険です。衛星回線でなければ、中国現地の通信会社を通して通話することになるでしょうが、そうなると、会話はすべて盗聴される可能性が高いからです。

すでに携帯電話の通信傍受など、中国当局にとっては当たり前のようにやっています。ニューヨーク・タイムズは、アメリカのセキュリティー会社の分析として、中国当局は2013年からウイグル人に対する通信傍受によって多くの個人情報を収集し続けていることを報じています。

2013年といえば、習近平が総書記、国家主席に就任した直後です。そして以後、習近平への権力集中とともに、異常なほど情報統制や人民への監視が強まっていったわけです。

香港の民主化運動を主導して「民主の女神」と呼ばれた周庭氏も、中国からの盗聴は日常茶飯事だと話していました。その周庭氏は、2020年6月に香港国家安全維持法が施行されると、2019年のデモを扇動したとして逮捕され、禁錮10カ月の実刑判決を受けました。2021年6月に釈放されましたが、現在も当局の監視下にあります。

民主化運動に参加した香港人は、続々と海外に脱出しましたが、それでも、中国当局による盗聴や尾行におびえています。

このような実態があるわけですから、これで北京五輪でのインターネットや電話での会話が盗聴・情報抜き取りをされないと考えるほうが、どうかしています。

そのため、外国人選手やスタッフは、公的な場所はもちろん、インターネットやスマートフォンでの会話にも細心の注意を払わなくてはなりません。うっかり習近平体制の批判や、台湾独立支持の話でもしようものなら、ブラックリストに載せられる可能性が高いのです。

もちろん北京五輪の際にいきなり逮捕・拘束される可能性は低いでしょうが、数カ月後、数年後に中国を再訪したときなどに捕まる可能性も否定できません。

台湾では2021年7月、通信アプリのLINEを通じて、台湾当局者や軍の高官ら100人のアカウントがハッキングされ、個人情報が流出したことが発覚しています。これもインターネット上からスパイウェアを送り込まれたことで起こったとも言われています。

台湾ではセキュリティー上に問題あるとして、2014年から各政府機関の公務員がLINEを使用することを禁じていました。それでもこのような被害が起こるのです。翻って、日本はどうでしょうか。むしろ官公庁で積極的にLINEを活用しているところも多いのではないでしょうか。

それで思い出されるのが、2021年3月に起こった、日本のLINEの騒動です。中国企業の技術者がLINEユーザーの名前やメールアドレス、会話、写真までも閲覧できる状態になっていることや、写真や動画のデータが韓国のサーバーに置かれていたことが明らかになり、大騒ぎとなりました。LINEは謝罪した上で中国からのアクセスを完全遮断し、データも国内サーバーに完全移転することを発表しました。

しかし、日本選手やスタッフが北京五輪でLINEを使用した際、台湾と同様の方法で、すべての会話や写真が抜かれる可能性も少なくありません。

私は、日本政府や情報通信企業などが、日本人選手団に注意を促すべきではないかと思っています。中国側は「事実無根」と言うでしょう。しかし、ウイグル人や香港人をふくめて、自国民に対して常日頃やっていることです。

日本はこれまで中国にさまざまな技術を盗まれてきました。中国高速鉄道などは、日本が新幹線技術を提供して建設協力しましたが、いまでは中国は「中国が開発した独自技術だ」などと主張し、各国に高速鉄道を輸出し、日本の鉄道輸出のシェアを奪っています。

インドネシアの高速鉄道受注では、日本側が行ってきた地質調査やルート策定の結果を中国側はそのまま盗んで、日本と全く同じプランを日本より格安で提案したことで、日本を抑えて受注に成功したとされています。このとき日本側は、中国側のやり口と、ほぼ日本で決まっていた受注を覆されたことに、大きなショックを受けました。

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その教訓があるならば、日本政府はせめて今回の北京冬季五輪では、日本人選手の競技上の戦略情報から通信通話の個人情報まで、中国から守って欲しいものです。