東アジア歴史文化研究会のブログ

日本人の素晴らしい伝統と文化を再発見しよう

『ふしぎな中国』近藤大介著(講談社現代新書)「西朝鮮」って何処の国? 紅衛兵が「白衛兵」となった? 中国の新語、流行語、隠語から新発見される現代中国[Z世代]の実態

東アジア歴史文化研究会

11月11日はアリババが独身者を対象の格安セール。一日で2兆円を超えたのが2021年。今年は冴えなかった。このダブルイレブンを日本語で「お一人様の日」といちはやく命名したのが本書の著者、近藤氏である。

それにしても読後感は「抱腹絶倒、やがて悲しき・・・」。

この言葉の通りなのである。中国の裏側で、末端の人々が何を考えているか、とくに[Z世代]と呼ばれる若者達がなぜあんなに無気力なのか?

実体験から綴られているだけに手に取るように中国の社会実態が分かる。

本書には34のキーワードが豊富な逸話と過去のデータとともに紹介されていて、たとえば「騎手」というのはデリバリー、大手2社だけで従業員(殆どがフリー)が800万人を超える。予備校、学習塾、家庭教師が禁止されおよそ壱千万の若者が失業したが、中国の労働市場で、新しい仕事は出前だったとは!

「凡学」とはサンスクリット語、チベット仏教の奥底をマスターする意味かと思いきや「ベルサイユのばら」のことで、中国では出版事業は強い統制下にあって(秦の始皇帝以後もこの伝統は不変だ)、点数も決められているが、ネット小説は制限を受けないから表現の空間がヴァーチャルの空間に拡がった。ここで交歓されている意見、別な意味で個々の文学的表現であり、いまの中国人が何を考えているかが分かる、という。

中国経済は沈没に向かっているうえ、近藤さんが期待した胡春華は政治局員から排除されてしまった。改革の芽はつまれた。

中国の若者達のアイドルだった馬雲もファンビンビンも、共産党の方針がかわって、いきなり天文学的な罰金が課せられた。言いがかりだが、ここで中国共産党の馬賊、山賊、匪賊的な体質が如実にでたのだ。

共産党は民間企業の儲けを搾り取り、余剰金を税金の名の下に収奪し、骨の髄までしゃぶりつくすとポイと捨てる。だから若者は金持ちになっても仕方が無い。中国夢などは悪夢であり、なにもしないにかぎると寝っ転がる。気力は無い。結婚もしない。子供を育てるなって煩わしい。

このような中国人の人生観の激変は、日本より早く、日本より徹底している。

就職しても愛社精神などあろう筈がなく、給与が良ければ、なんのためらいもなく引き継ぎもしないでトラバーユ。日本のように部署が変わると後輩を取引先に連れて行って「あとは宜しく」とはならない。

中国人にいわせれば自分で開拓した人脈は自分の利権。なぜ他人にそんな大事な人脈を紹介するのか。となる。徹底した利己主義、自分が得になること以外に興味は無く、やれといわれたら仕方なくやるが、チンタラとサボりながら、仕事は手抜き。五時前には帰り支度をはじめ、五時を過ぎると会社には誰もいない。

中国人女性と結婚した日本人男性は、かなりの比率で離婚している。人生に追い求めるものが異なるからだ。

「潤学」とは学問を究めるという意味の筈だろう。でもいまの中国ではべつの意味がある。 中国夢が悪夢であると知っているセンスゆたかな人はカネができたら外国へ行く。

ちょっとした人なら二重国籍で、改革開放、大量の留学生党という現象の裏で目に見えないかたちで新しい価値観、現代風の人生観が拡大していた。習近平が鼓吹する「中国夢」を別の意味で解釈していたのだ。

たとえば、「建国大業」という映画を中国の俳優172名が総出演で制作すると発表されたが、その俳優たちの殆どが外国籍を取得していた。残った俳優は9名だった。

「潤」はルンと発音するが、これを英悟のRUNに見立て「走る」と解釈する。つまり海外留学とはいずれ中国を捨てて外国へ逃げるということである。

大学を出ても職がない。ならば出前要員となって糊口をしのぐか、大学院(22年の大学院志望者が300万ちかかった)。そして外国留学、日本留学組は、いうなればあぶれものだと言える。

中国のネットに頻出するという「西朝鮮」は何処か?

もう想像はついたでしょうね。北朝鮮のミサイルは天津、北京、開封、洛陽、上海、厦門も射程内である。

近藤大介 1965年生まれ。埼玉県出身。東京大学卒業。国際情報学修士。講談社入社後、中国、朝鮮半島を中心とする東アジア取材をライフワークとする。講談社(北京)文化有限公司副社長を経て、講談社特別編集委員。Webメディア『現代ビジネス』コラムニスト。『現代ビジネス』に連載中の「北京のランダム・ウォーカー」は日本で最も読まれる中国関連ニュースとして知られる。2008年より明治大学講師(東アジア論)も兼任。2019年に『ファーウェイと米中5G戦争』(講談社+α新書)で岡倉天心記念賞を受賞。他に『アジア燃ゆ』(MdN新書)『未来の中国年表』 』『パックス・チャイナ 中華帝国の野望』『ファクトで読む米中新冷戦とアフター・コロナ』(講ともに談社現代新書)など著書多数。