東アジア歴史文化研究会のブログ

日本人の素晴らしい伝統と文化を再発見しよう

北京五輪以後、中国経済は十年間以上もジャンプしていたのだが 中国の生活保護費(「五保戸」)はどれくらいの規模なのか?(宮崎正弘国際情勢)

東アジア歴史文化研究会

中国共産党は、生活困窮者を救済するとして「臨時援助金を支給せよ」と地方自治体に要請した。春節前に財政援助を提供する必要があると指摘した。

旧正月(春節)には伝統的行事に「補助金」、もしくは「買い物クーポン」などを発行することがあり、2024年の国慶節の前にも補助金をだした自治体が多かった。

全国で約4,000万人が最低限度の生活保障の補助金を受けており、さらに474万人が「極度の貧困」と認定されているらしい。中国の公式統計は作為が多いので、真相は藪のなかである。

中国の生活保護費は、「五保戸」 と呼ばれ、中国農村社会保障制度の中でも重要なもの。貧困農村においては住民の50%がこの制度の恩恵を受けている。

『恩恵』と言っても支給額は「雀の涙」ていど、餓死者をださないという中国共産党の基本路線である。

「中国全国総工会の調査によると,2001年 6 月までに98万1000人が『基本生活費』を受け取ったと言うが、133万7000人は満額の基本生活費をもらっていない。一方,失業保険は受給率と受給水準が低い。受給者数は1998年の158万人から99年の271万人に(中略)。受給者は全体の半分以下である。受給額は逆に98年の1289元から99年の 1174元に減少し,対平均賃金比17.2% から14,1% へとさらに低水準になった」(千葉商科大学『社会政策学会謝絵 政策』)

公式統計の数字をみると、2000年から08年間では次のようだった。

年度   受給者数    支給額(年間)
===  ======  =======
2000  400万人  775元(年間)
2002 2060万人  543
2005 2230    868
2007 2270万人 1232元

さらに都市部と農村部の2007年と08年度の数字を比較すると、

2007年     2008年
=====     =======
都市部2270万人  2330万人 
農村部3670万人  4300

受給額は07年に、都市部が182元(毎月)、農村部は70元だった。これが2008年には都市部206元、農村が82元とちょっぴり増えている。

▼北京五輪以後、中国経済は十年以上ジャンプしていた

この2008年といえば北京五輪、当時の人民元は@12円だった。

ということは農村部の生活保護が毎月82元(邦貨換算で984円)として、年間支給額を邦貨換算すると、11808円となる。どうやって食べていたのか?

しかし北京五輪以後、中国経済は大飛躍をとげ、全土に新幹線が張り巡らされ、大都市には地下鉄が開通し、中間層が激増して自動車を購入し子供を大学へ送り、更に富裕層は海外留学へ送り出した。富裕層は不動産と株式への投機に狂奔した。

所得がうなぎ登りとなって、地方都市にも高層マンションが林立し、テーマパークにシネマコンプレックス、大規模なショッピングモール。

この未曾有の高度成長経済は2020年まで持続した。

急坂を転がり落ちるように中国バブル経済の突然の崩壊が始まった。

コロナ災禍で年閉鎖、サプライチェーンの分断にくわえて、米国の中国制裁、外国企業の撤退となり、不動産バブルが瓦解した。

建築現場の出稼ぎ組は賃金も受け取れず地方へ、農村へ帰る。未曾有の不況が中国を襲っている。

生活保護を受け取っている世帯がどれほどなのか、公式発表さえないので不明である。

数年前の全人代で李克強首相(当時)が「中国は8億人の貧困を救い出した」と豪語した。そのあまりの「公然たる嘘」に驚かされた。ま、嘘は日常生活に溶け込んでいて、だれも政府の言うことは信用しないのだが。

▼世銀とOECDの「貧困」の基準を当てはめていると

世銀の貧困基準は「一日あたり1・9ドル」。この基準以下を「貧困」と定義しているから、1・9ドルならば、世銀のいう「貧困」は中国ではごく少数だろう。

事実、1981年に中国の88%が貧困あったが。2023年には世銀インデックスの『1・9ドル』を当てはめれば中国の極貧困世帯はゼロになる計算になる。数字のマジック、まるで実情を反映していない。

PPP(購買力平価)で計るといくらか、ジニ係数は本当のところ、幾らなのか。中国の公表数字は作為的で信用に値しない。ジニ係数はおそらく0・45あたりだろう。すなわちGDPの45%を1%の特権階級が独占しているのである。

そこでOECD基準ならどうか。貧困の定義は「一日2100カロリー以下」がOECDの基準である。実質の貧困の度合いは食費、住居費が基本で、都市生活者の可処分所得はいくらか上昇したが、都市に溢れるホームレスや大量の失業の群れという矛盾に適格な回答はない。

都市化は中国でも進み、都市人口が刮目に値するほど増えた。

2003年から2022年までの統計で、人口200万以上の都市は、32から72都市となった。上位20の都市の人口が全体の17%となった。このため中国は人口分散化を企図し、他方では農業生産強化を訴えるという二律背反を繰り返す。

いずれにせよ中国の「成長」という神話」は終わった。

失業の多くは農村へ戻り、『中国の夢』は無残にくじけた。