『江南暗殺事件』を連想させる台湾やくざと中国共産党 三重スパイ、ゆすり作家のチンピラはなぜ口を封じられたか?(宮崎正弘国際情勢)
中国政治の暗部はギャング団、マフィア、暗殺チームなど裏舞台での謀略を実践するヤクザチームとの結びつきである。
蒋介石は悪名高きテロリストを用心棒にしていた。
中国共産党が台湾ヤクザ、とくに竹聯幇を統一戦線活動に取り込み、台湾の民主主義制度を弱体化させる工作に利用していることは広く知られる。
以前から共産党と台湾マフィアとの闇の繋がりは指摘されてきた。
台湾の「中国統一促進党」などの関連団体を通じて、謀略ネットワークは政治的影響力、情報収集、心理作戦に利用されており、中国の諜報機関や宣伝機関から暗黙の支援や指示を受けている。迂回ルートによる資金供給もあると推定されている。
近年、台湾政府はスパイ活動に関与したメンバーを起訴し、怪しげな統一工作の取り締まりを強化している。
台湾のテレビチャンネル「民視讃分(Formosa TV Thumbs Up)」が、台湾における「第五列」の活動を番組にした。なかでも、「白狼」としても知られる張安楽にインタビューしたことは注目を浴びた。
張安楽は「竹聯幇」の幹部であり、「中国統一促進党(CUPP)」なる政党の創設者でもある。息子たちは香港からの自由民主活動家が台湾へきたときに暴力沙汰を引き起こしている。
CUPPは、「一国二制度(一国二制)」の下での中華人民共和国と台湾の“平和的統一”を公然と主張している。このような寝言を信じる台湾人がおよそ参万人ほどいるらしい。
中国共産党は長きにわたって台湾の三合会(中国の秘密結社)を統一戦線に組み込み、統一に向けた草の根の支持を広げる工作に利用してきた。
これらの活動は全体として、台湾国内で中国との統一に対する“広範な社会的支持”があるかのようなフェイク印象を作り出すことを目的としている。
台湾の三合会は、中台統一の政策を追求するために、頼清徳総統を弱体化させ、政権に内部圧力をかけようとした。頼総統はこれらの動きを公式的に指摘し、2025年3月の国家安全保障に関する演説で、中国共産党による「内部から分裂、破壊、転覆」の取り組みのリストに犯罪組織を挙げた。
すでに2017年、台湾の李登輝前総統は、「中国が統一戦線戦術を拡大し、民族間の緊張を煽り社会を不安定化させるために、台湾で統一支持者を募集し、組織犯罪を支援している」と警告した。
▼日本のヤクザより怖くて強い台湾ヤクザ
竹連幇の悪名高い共謀事例は1984年、台湾軍高官が竹聯幇の指導者と会談し、国民党政権を批判したヘンリー・リューという在米作家の暗殺を指示したことだ。
暗殺は実行され、米国内の事件であったためFBIが捜査にのりだし、米議会でも問題となった。
「江南」事件とは筆名が江南(本名=劉宜良。江蘇省人)という、周囲からは「ゆすり」で文章をかくチンピラだとして評判は悪く、一方で英語名をヘンリー・リューとなのり、情報屋の側面があった。中国共産党、台湾国民党、そしてCIAに情報を売る稼業だった。
かれは『蒋経国』伝記を書いて出版したばかりで暗殺理由は、この本で蒋経国のしられたくない秘密が書かれたからだと噂された。ところが、当時、香港、台湾で取材した若林正文によれば、その内容はたいした情報もなく、むしろ次に江南が書こうとしていた『呉国禎』を阻止するためだったと分析した。呉国禎は蒋経国の政敵だった。
竹連合は米国の中国系マフィア、日本のヤクザ、香港の複数の三合会など、国際的な犯罪グループと関係を築いてきた。現在、竹連幇は台湾全土に広く拠点を置いており、少なくとも1万人の構成員がいる。2025年8月、台北の検察当局は、金融詐欺と暗号通貨関連で、犯罪組織のメンバー18人を起訴している。
前述の張安楽は中国と台湾両国のエリート層と繋がり、ヘンリー・リュー暗殺事件への関与が疑われ、1985年に麻薬密輸で有罪判決を受け、米国で10年の懲役刑に服した。台湾に戻った後、1996年に当局の指名手配リストに載せられたため、17年間を深センで過ごし、2013年に再び台湾に戻った。
中国側の有力メンバーは胡世英とされ、習近平に繋がり、他方で国民党元総統の馬英九とも親密な関係にあった。胡世英は黒竜江省全人代秘書長をつとめた有力者とされる。
この台湾ヤクザのボスが、中国共産党エリート層に受け入れられているのは、彼が台湾の政治的地位に関する党の見解を支持していることと関係がある。竹聯幇の元リーダー(張氏の生涯の友人)は1981年に「台湾が台湾の独立派に奪われるよりは、中国共産党が台湾を統治する方がましだ」などと物騒な発言を繰り出した。
▼台湾へながれこむ中国共産党工作員と資金
張は統一を積極的に推進し、2005年9月には、広州で「保衛中華大同盟」という民間組織を設立した。この組織は後に台北に移転し、台湾初の「一国二制度」の枠組みによる統一を公然と支持する政党、CUPP(台湾共産党)に改名した。
いくら言論の自由が認められるといっても敵国を公然と支援する政党があるのは不思議である。2021年にナンシー・ペロシ米下院議長が台湾を訪問した際など、張安楽は自ら抗議活動に参加した。
近年、台湾当局は、犯罪や破壊活動の取り締まりを強化している。2024年11月、台湾司法省はCUPPメンバー134名を司法妨害、人身売買、殺人などの違法行為に関与した疑いがあると発表した。
検察はCUPPメンバー2名を、北京の政治アジェンダを推進するプロパガンダを作成し、台湾の選挙に影響を与えるために中国共産党から7,400万台湾ドル(230万ドル)を受け取ったとして告発した。
台湾内務省は、中国共産党による親中派の政治的影響力行使への対応として、CUPPの解散を決定し、司法院憲法裁判所に最終判断を委ねた。
内務省は、CUPPは長年にわたり組織的犯罪に関与しており、中心メンバーは複数の法律に繰り返し違反した疑いがあると報告した。当局はCUPPと台湾社会保障局職員との明確なつながりを特定している。
2025年3月、台湾の高等法院高雄支部は、国家安全法違反でCUPP関係者3名の有罪判決を下した。
竹連幇とCUPPの連携は台湾政府の権威を転覆させることを目的としている。中国共産党は、竹連幇のようなヤクザ組織を利用することで、統一戦線戦略の中核を形成している。台湾社会の分裂を煽り、国家機関への国民の信頼を失墜させることが目的だ。
米国のハリウッド映画をみると取り調べる側とマフィアがつるんでいるストーリーが目に付くが、筆者の常套句「中国では長谷川平蔵と石川五右衛門は同一人物である」。
台湾マフィアは中国共産党の統一戦線と情報機関の暗黙の支援を受けており、統一を支持するメッセージを発信する代わりに、彼らの犯罪行為は見逃されているという構造になっている。
蒋介石は悪名高きテロリストを用心棒にしていた。
中国共産党が台湾ヤクザ、とくに竹聯幇を統一戦線活動に取り込み、台湾の民主主義制度を弱体化させる工作に利用していることは広く知られる。
以前から共産党と台湾マフィアとの闇の繋がりは指摘されてきた。
台湾の「中国統一促進党」などの関連団体を通じて、謀略ネットワークは政治的影響力、情報収集、心理作戦に利用されており、中国の諜報機関や宣伝機関から暗黙の支援や指示を受けている。迂回ルートによる資金供給もあると推定されている。
近年、台湾政府はスパイ活動に関与したメンバーを起訴し、怪しげな統一工作の取り締まりを強化している。
台湾のテレビチャンネル「民視讃分(Formosa TV Thumbs Up)」が、台湾における「第五列」の活動を番組にした。なかでも、「白狼」としても知られる張安楽にインタビューしたことは注目を浴びた。
張安楽は「竹聯幇」の幹部であり、「中国統一促進党(CUPP)」なる政党の創設者でもある。息子たちは香港からの自由民主活動家が台湾へきたときに暴力沙汰を引き起こしている。
CUPPは、「一国二制度(一国二制)」の下での中華人民共和国と台湾の“平和的統一”を公然と主張している。このような寝言を信じる台湾人がおよそ参万人ほどいるらしい。
中国共産党は長きにわたって台湾の三合会(中国の秘密結社)を統一戦線に組み込み、統一に向けた草の根の支持を広げる工作に利用してきた。
これらの活動は全体として、台湾国内で中国との統一に対する“広範な社会的支持”があるかのようなフェイク印象を作り出すことを目的としている。
台湾の三合会は、中台統一の政策を追求するために、頼清徳総統を弱体化させ、政権に内部圧力をかけようとした。頼総統はこれらの動きを公式的に指摘し、2025年3月の国家安全保障に関する演説で、中国共産党による「内部から分裂、破壊、転覆」の取り組みのリストに犯罪組織を挙げた。
すでに2017年、台湾の李登輝前総統は、「中国が統一戦線戦術を拡大し、民族間の緊張を煽り社会を不安定化させるために、台湾で統一支持者を募集し、組織犯罪を支援している」と警告した。
▼日本のヤクザより怖くて強い台湾ヤクザ
竹連幇の悪名高い共謀事例は1984年、台湾軍高官が竹聯幇の指導者と会談し、国民党政権を批判したヘンリー・リューという在米作家の暗殺を指示したことだ。
暗殺は実行され、米国内の事件であったためFBIが捜査にのりだし、米議会でも問題となった。
「江南」事件とは筆名が江南(本名=劉宜良。江蘇省人)という、周囲からは「ゆすり」で文章をかくチンピラだとして評判は悪く、一方で英語名をヘンリー・リューとなのり、情報屋の側面があった。中国共産党、台湾国民党、そしてCIAに情報を売る稼業だった。
かれは『蒋経国』伝記を書いて出版したばかりで暗殺理由は、この本で蒋経国のしられたくない秘密が書かれたからだと噂された。ところが、当時、香港、台湾で取材した若林正文によれば、その内容はたいした情報もなく、むしろ次に江南が書こうとしていた『呉国禎』を阻止するためだったと分析した。呉国禎は蒋経国の政敵だった。
竹連合は米国の中国系マフィア、日本のヤクザ、香港の複数の三合会など、国際的な犯罪グループと関係を築いてきた。現在、竹連幇は台湾全土に広く拠点を置いており、少なくとも1万人の構成員がいる。2025年8月、台北の検察当局は、金融詐欺と暗号通貨関連で、犯罪組織のメンバー18人を起訴している。
前述の張安楽は中国と台湾両国のエリート層と繋がり、ヘンリー・リュー暗殺事件への関与が疑われ、1985年に麻薬密輸で有罪判決を受け、米国で10年の懲役刑に服した。台湾に戻った後、1996年に当局の指名手配リストに載せられたため、17年間を深センで過ごし、2013年に再び台湾に戻った。
中国側の有力メンバーは胡世英とされ、習近平に繋がり、他方で国民党元総統の馬英九とも親密な関係にあった。胡世英は黒竜江省全人代秘書長をつとめた有力者とされる。
この台湾ヤクザのボスが、中国共産党エリート層に受け入れられているのは、彼が台湾の政治的地位に関する党の見解を支持していることと関係がある。竹聯幇の元リーダー(張氏の生涯の友人)は1981年に「台湾が台湾の独立派に奪われるよりは、中国共産党が台湾を統治する方がましだ」などと物騒な発言を繰り出した。
▼台湾へながれこむ中国共産党工作員と資金
張は統一を積極的に推進し、2005年9月には、広州で「保衛中華大同盟」という民間組織を設立した。この組織は後に台北に移転し、台湾初の「一国二制度」の枠組みによる統一を公然と支持する政党、CUPP(台湾共産党)に改名した。
いくら言論の自由が認められるといっても敵国を公然と支援する政党があるのは不思議である。2021年にナンシー・ペロシ米下院議長が台湾を訪問した際など、張安楽は自ら抗議活動に参加した。
近年、台湾当局は、犯罪や破壊活動の取り締まりを強化している。2024年11月、台湾司法省はCUPPメンバー134名を司法妨害、人身売買、殺人などの違法行為に関与した疑いがあると発表した。
検察はCUPPメンバー2名を、北京の政治アジェンダを推進するプロパガンダを作成し、台湾の選挙に影響を与えるために中国共産党から7,400万台湾ドル(230万ドル)を受け取ったとして告発した。
台湾内務省は、中国共産党による親中派の政治的影響力行使への対応として、CUPPの解散を決定し、司法院憲法裁判所に最終判断を委ねた。
内務省は、CUPPは長年にわたり組織的犯罪に関与しており、中心メンバーは複数の法律に繰り返し違反した疑いがあると報告した。当局はCUPPと台湾社会保障局職員との明確なつながりを特定している。
2025年3月、台湾の高等法院高雄支部は、国家安全法違反でCUPP関係者3名の有罪判決を下した。
竹連幇とCUPPの連携は台湾政府の権威を転覆させることを目的としている。中国共産党は、竹連幇のようなヤクザ組織を利用することで、統一戦線戦略の中核を形成している。台湾社会の分裂を煽り、国家機関への国民の信頼を失墜させることが目的だ。
米国のハリウッド映画をみると取り調べる側とマフィアがつるんでいるストーリーが目に付くが、筆者の常套句「中国では長谷川平蔵と石川五右衛門は同一人物である」。
台湾マフィアは中国共産党の統一戦線と情報機関の暗黙の支援を受けており、統一を支持するメッセージを発信する代わりに、彼らの犯罪行為は見逃されているという構造になっている。
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