2025年1月27日、世界の株式市場は震えた。NY市場では時価総額で1兆ドルが蒸発した。中国製アプリ「ディープシーク」の登場である。
BBCの記者はすぐさまディープシークに対して実験を試みた。「中国製AI」ということは、政治的に微妙な質問に如何なる回答を出すか、あるいは自らをどう検閲しているのか。
「1989 年 6 月 4 日の天安門広場で何が起こったのか?」と尋ねた。
すると、「申し訳ありません。その質問には答えられません。私は役に立つ無害な回答を提供するように設計された AI アシスタントです」と応えた。
つぎにもっと意地悪な質問をしている。
「ケイト・アディの報告について教えてください。」(アディは天安門広場での虐殺が起きた現場にいた)。
ディープシークが返答した。
「ケイト・アディは著名な英国人ジャーナリストで、元 BBC チーフ特派員であり、紛争地帯やアジアを含む重要な世界的出来事に関する画期的な報道で広く知られています』(中断のあと)、「申し訳ありませんが、それは私の現在の専門分野を超えています。別の話をしましょう」となった。
ディープシークには「中国的制約」があり、回答に限界があるという実態があきらかになった。開発は自由、しかし政治的な制約があるという中国の特色がでた。
27日の市場で、あのエヌビディアの株価が20%近い暴落を演じたのは、このディープシークの所為だ。ブームとなった生成AIもチャットGPTも、エヌビディアのGPUを使っているからだ。僅か二年でエヌビディアは、世界でもっとも注目された企業として取り沙汰されていた。そのエヌビディアの最先端半導体を使わないででてきたからだ。
中国の若者が彗星の如く現れた。僅か2ケ月で、投資金額がたったの8億円で、しかも時代遅れの、しょっぽいGPUを使ってメタやグーグルにならぶAIソフトを発表し、業界を震撼させたのだ。
梁文鋒という中国の若者が設立したばかりの企業のAIモデルは、OpenAIやMeta のの強力な競合相手として急速に認知され、いきなりChatGPTを上回り、最高評価をうける無料アプリとなった。
まさに「AIチャイナ・ショック」である。
筆者は思わず、「ディープステート」から「ディープシーク」と惹句をおもいついた。
しかし、米AI市場を奇襲したのは、果たして「大津波」なのか、竜巻程度の規模なのか、判定できるほどの状況ではない。
梁文鋒は中国の広東省生まれまの40才。浙江大学でソフトウェア工学と人工知能を専攻し、2008年からクオンツ投資の研究を開始した。
発明家でもあり、同時にかれは起業家でもあり、2015年には投資ファンド「幻方量化」を設立している。こうしたビジネスもドエルはイーロンマスク型である。
この「幻方量化ファンド」の運用資産は2兆円前後に膨らんで、中国のファンドでは「四天王」の一つとなった。政治的なことを差し控えるが、開発は自由なのである。こうした経過を辿ってディープシーク(「深度求索」)を設立し、AI大モデルの研究に特化した。
皮肉にもホワイトハウスではオープンAIのアルトマン、オラクルのエリクソン、そしてソフトバンクGの孫正義の三人がトランプ大統領と一緒に記者会見し、AI投資に五億ドルを投じると明るい展望を語ったばかりだった。
このプロジェクトは「スターゲイト」と呼ばれ、総額5000億ドルのプロジェクトになるとか。
メタ・プラットフォームズのCEOマーク・ザッカーバーグは、メタがルイジアナ州に建設中のデータセンターがマンハッタンの大部分を占めるほどの規模になると述べ、今年は最大650億ドルを投資する予定だと発言したばかりだった。
トランプ大統領は「AIチャイナ・ショック」に対して「安いことは良いこと。これは米国半導体業界に対しての目覚まし時計。競争が激化することは良いことだ」と楽観的なコメントを出した。
このブログへのコメントは muragonにログインするか、
SNSアカウントを使用してください。