東アジア歴史文化研究会のブログ

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中国ではリーマン級の危機 消費増税“強行”なら取り返しがつかない(高橋洋一)

東アジア歴史文化研究会
「日本の解き方」2016.01.20

中国経済の減速や原油価格の下落、中東などの地政学リスクや世界的な株安など、年初から波乱要因が多くなっている。本コラムの今年の経済見通しでも、年前半はさえない展開だと書いた。

そして、7月の参院選(衆議院とのダブル選挙もありえる)の前に、消費再増税中止と最大27兆円の経済対策(埋蔵金バズーカ)があれば、年後半の景気は持ち直すとした。

このメーンシナリオに変化はない。海外の波乱要因すべてを予見していたわけではないが、中国経済だけでマイナス要因としては十分である。このままいけば、景気が反転する可能性は残念ながら少ない。

安倍晋三首相は、国会で「リーマン・ショックのような危機」がなければ消費再増税をすると明言しているが、これを額面通りに受け取る必要はない。昨年の講演では「国民の納得がなければいけない」と述べている。国会答弁とは異なり、アドリブで安倍首相が話した言葉なので、この方が真意であろう。

もっとも、今の中国経済を見ていると、「リーマン・ショックのような危機」といってもまったく間違いだとは言い切れない状況だ。

中国の経済指標の信憑(しんぴょう)性については疑問視されているが、輸入統計は相手国の中国向け輸出統計が存在するのでごまかせない。この意味で、輸入統計は中国で唯一信頼できる統計だともいえる。輸入の動きは国内総生産(GDP)の動きと安定的に連動するので、輸入の伸び率から、ある程度GDPの伸び率を推計することもできる。

2015年の輸入額は対前年比で14・1%の減少である。これほどのマイナスは、リーマン・ショック以来のようだ。日本を含む世界各国の中国向け輸出がリーマン・ショック並みに減少しているのであるから、この事実から、すでにリーマン級の危機が起きているといっても言い過ぎではないだろう。

ちなみに、中国政府に影響力の強い政府系シンクタンク、中国社会科学院は、16年の輸入はさらに減少し、前年比3・0%減と予想している。この数字は、中国経済の落ち込みがかなり深刻であることを示している。15年と16年ともに経済成長率はマイナスではないだろうか。そうであれば、日本にとっては明らかに「リーマン・ショックのような危機」が隣国で発生していることになる。

加えて、原油価格の下落が生じている。日本経済にはプラスの効果もあるが、資源国の経済を悪化させ、その反動で世界経済や日本経済にもマイナスの影響が出てくる。かつてと比べものにならないほどに、資源国の世界経済に占めるウエートが大きくなったからだ。

中東ではシリア問題やサウジアラビアとイランの対立があり、原油安が火に油を注ぐ形となっている。

こうした世界情勢を考えると、とても日本国内で消費増税する環境にはなっていない。このようなときに、消費増税を強行すれば、日本経済にとって取り返しがつかないことになるだろう。

(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)