東アジア歴史文化研究会のブログ

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破竹の進撃、台湾ビッグテック二社の光と影 鴻海精密工業は大規模なAI投資、エヌビディアは対中迂回輸出の失態(宮崎正弘国際情勢)

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鴻海精密工業は、スーパーコンピューターセンター向け人工知能(AI)機器を大量に購入するため13億7100万ドルの投資計画を承認した。


自己資金による投資は今後、1年かけて行われ、クラウド・コンピューティング・サービスの拡大と製造、電気自動車、スマートシティの3つのプラットフォームの開発加速を目的としている。


鴻海精密工業はこれまでにアップル、HP(ヒューレット・パッカード)、DELL(デル)にマザーボードや各種コネクタ、部品のOEM供給と組み立てを請け負って急成長をとげてきた。機械部品の下町工場から世界的企業になったのだ。任天堂のNintendo SwitchやソニーのPlayStation、マイクロソフトのXboxといったゲーム機、ノキア、ブラックベリーの携帯端末・スマートフォンの委託生産も受託し躍進を遂げた。


また、アリババグループとともにバンク・ロボティクス・ホールディングスに出資している。創業者は親中派として知られる郭台銘だ。郭は台湾総統選挙に(北京の示唆をうけて?)出馬しようとしたが国民党の正式候補にはなれず土壇場で撤退した。


「AIの応用はまだ始まったばかり」であり、あらゆる業界に浸透していくだろうと鴻海精密工業幹部(中国での会社名がフォッコスコン)が言う。鴻海精密は日本でシャープを買収した。スマートフォンや従来の電子機器製造を超えた新たな成長の原動力を求め高度なAI大規模言語モデルの初の繁体字中国語バージョンも発表している。


鴻海精密は、高雄のAIデータセンターにエヌビディアの800VDCデータセンター電力アーキテクチャーを導入し、サーバー、データセンター、再生可能エネルギーの統合のモデルサイトにする予定である。日本勢を凌駕した破竹の進撃は続く。


一方、中国へ禁制品の迂回輸出を疑われているのがエヌビディアである。


米国政権はエヌビディアなどの高性能半導体が中国の軍事力強化に転用され、またハイテク競争で、米国製、あるいは台湾、韓国製の高度AIが中国の技術発展に優位性を与えるという懸念から、中国への輸出を強く規制してきた。


2025年4月にエヌビデァの「H20」の対中輸出を差し止めたが、七月になってトランプ政権は手のひらを返し、輸出承認に踏み切った。


これはエヌビディアCEOのジェンソン・ファン(黄仁勳)が頻繁に訪中し、さらにはホワイトハウスに出掛けて、説得したからだ。


AI担当のデイビット・サックスに「中国が独自の開発をなすと、以後、アメリカのビジネスモデルは通じなくなり『チャイナモデル(中国規範)』がハイテクを主導することになっても良いのか」と迫った(詳細は拙著『テクノリバタリアンの野望』、ワック参照)。


対中タカ派でしられるサックスはピーター・ティールの後輩にあたり、彼の判断がトランプを翻意させた。ティールはスタンフォード大学で左傾化する風潮に抗して保守主義の『スタンフォード・レビュー』を創刊、サックスはその二代目編集長だった。反中国はしたがって筋金入り。そのサックスがエヌビディアのH20の対中輸出を認めたということは逆に言えば、中国の猛追をかわし、こんごもビジネスモデルをアメリカ規準に従わせることが得策と判断したからだろう。


▼FBIの眼が光った


ハイテクAIは米国が禁止しても、禁止しても、いつしか中国に渡っている。


抜け穴がシンガポールとマレーシアに設立された、曖昧なペーパー・カンパニーだった。中国共産党のダミーである。


台湾の『自由時報』(10月30日)がすっぱ抜いた写真は、エヌビディアのCEO、ジェンソン・ファン(黄仁勲)と宴席で隣に着席した謎の女性だった。


件の女性はシンガポールが拠点の「『メガスピード』社のシニア・エグゼクティブ」を名乗るアリス・フアン(黄楽)女史。同社が1年以内に20億ドルのNVIDIAのAI技術を買収する準備を進めていると報じられた。


米国商務省は、このメガスピード社が中国への米国輸出規制の回避を支援していたかどうかを調査している。またシンガポール当局も、同社が中国企業による米国半導体輸出規制の回避を支援した疑いで捜査を始めた。


米国商務省はエヌビディアが対中輸出規制を遵守するとの誓約にも拘わらず、AIチップの最終目的地を追跡できる能力に疑問を投げかけた。


同社が米国の輸出規制を容易に回避できる可能性が浮んだ。中国のハイテク兵器開発、軍事ロボット反体制派の監視などを高度化させ、米国のAI開発における主導権を奪われる懼れがあると米国政府が懸念を高めた証拠である。


エヌビディアは台湾の工場を大々的に稼働させ、新工場を建設し、研究開発センターも台湾においている。創業者のファンは台湾人だが、エヌビディアそのものは米国籍である。


中国企業は密輸ネットワークを構築し、数十万個もの禁止対象チップを中国に輸出しているという疑惑は以前から指摘されてきた。


密瑜のトライアングル構築と活用はフェンタニル密輸出の構造をみてもあきらかなように、中国マフィアお得意の戦術である。米国下院の「中国問題特別委員会」がエヌビディアの中国および東南アジアへのチップ販売に関する調査を本格化させている。


▼迂回輸出、第三国にも中国のダミー会社


件のあやしいシンガポール企業とその女性幹部が扮する「メガスピー社」なるダミー企業は、2023年に中国のゲーム会社からスピンオフした人たちが設立したと自称している。


そのマレーシアにおいた子会社がNVIDIAの最先端製品を20億ドルも調達するというわけだ。


ほとんどが中国軍への技術提供がを目的であり、複雑な迂回ルートを構築してきたことになる。メガスピード社はこれらのチップをいったんはマレーシアとインドネシアのデータセンターに出荷して目的地を擬装し、巧妙に最終仕向地を消した。


黄楽女史と黄仁勲との交際だが、二人がいつ出会ったのかは不明。25年5月にふたりが一緒になって台北のレストランを後にする姿が目撃された。彼女は上海に拠点を置くファンドのエグゼクティブディレクターを務めていたという。「上海のファンド」(?)といえば何らかのかたちで中国共産党幹部と繋がっている。


米国当局は、メガスピードのデータセンターに保管されていたNVIDIAのチップを発見した。台湾の有力紙『自由時報』によれば、「外国人記者がメガスピード社のシンガポールオフィスを訪れたところ、従業員が2人しかいなかった。メガスピードの人事部長によると、「取締役のほとんどが中国に拠点を置いており、シンガポールにはほとんど姿を見せないため、一度も会ったことがない」と言った。


イスラエルはブルガリにダミー会社をおいてポケベルを製造して原産地を擬装し、それがハマスの連絡網に使われた。ハマスの要員たちを爆殺、あるいは負傷させた。


中国は武器、武器関連機材や部品を第三経由で密輸したら意、東欧のEU加盟国に実態のないペーパー・カンパニーを幾つも登録している。イランやロシアに中国政府機輸出の迂回路が構築されていることは国際常識である。


前号にのべたパランティアの追跡システムがいつ威力を発揮するか。


パランティアはアレックス・カープとピーター・ティールが共同設立したデータ分析会社だが、どっこい落とし穴があった。「パレンティアの元従業員ふたりが、競合するAI企業のために長期にわたって窃盗行為に関与していた」としてNY地裁に提訴した。


パランティアは訴状で、ラダ・ジェインとジョアンナ・コーエンの二人が同社を退職し、ベンチャーキャピタル会社ジェネラル・カタリストが所有する「パーセプタ」で働いた後、競業避止義務契約に違反したとした。つまり機密がもれたのである。この機密、中国に筒抜けになったか?