東アジア歴史文化研究会のブログ

日本人の素晴らしい伝統と文化を再発見しよう

どん底の『底』はまだ見えない中国経済を「前途洋々」(新華社) 蘇生はありえず、中国は「失われる三十年」に突入せざると得ない(宮崎正弘国際情勢)

東アジア歴史文化研究会

経済理論では説明しきれない事象が世界経済でおきている。


為替は(1)金利差(2)経常黒字で決まるが、経済理論があてはまらない(3)政治事情(プラザ合意など)に意外な局面となる。基本は需給バランスである。ドル円関係で言えばドル需要が強いから円安がつづくのである。


12月19日、日銀は利上げに踏み切った。ところが、「あれっ?」。為替は円高ではなく円安にぶれた。日銀がもたもたしているから、あの程度の利上げを市場は「織り込み済み」だったのだ。


中国はドン底から『底なし』の経済悪化に遭遇しているのに為替は人民元高である。1元=12円程度が適正相場だが、12月19日現在1元=22元強である。だれが人民元を買い支え、日本円を売っているのか?


たしかに輸出黒字で中国の外為金庫にはマネーストックは幾分はあるが、ダムの貯水池を循環しているだけに過ぎない。通貨供給量が健全に見えるのは、マネーの流れが機能不全にある状況を意図的に見落としている。


もっとも奇怪で不思議なのは倒産しているはずの中国経済がまだ存命していることだ。「世界の工場」ではなくなり世界のサプライチェーンの中軸から外れているのに、データの改竄もしくは隠蔽によって、中国経済は再生すると錯覚している。そういう論理を組み立てて世界の投資家を騙しているのだ。


中国経済の躍進をささえてきたのは(1)不動産ブーム(2)輸出の黒字による経常黒字(3)技術革新の三つだが、(1)は沈没。(2)ダンピングによる過剰在庫処分でしかなく赤字輸出が実態だ。


(3)は経済全体の整合性がないのに中国メディアが連日「ハイテク大国=チャイナ」と過剰報道に明け暮れている。


頭でっかちのアメリカ経済がものつくりをわすれてしまったように中国人は工場労働者になることをやめて大學へ大學へと向かいだし、価値観を変えてしまった。


党製、官製報道は誰も信用しないほどに嘘だらけだが、四中全会まえの人民日報と新華社の記事たるや凄まじい中身だった。


「中国経済は絶好調であり前途洋々」。


この経済絶好調を光明論というが、太陽に光があたらない影がある。国民の大半は影であり、「わたしの家には光りがとどかない」のに? 中国語の光には殲滅という意味がある。


現実との乖離がこれほど開いているのは天と地ほどの落差だ。


第十四次五ケ年計画は「飛躍的発展を遂げる」云々とあるが、コロナ以後の大不況襲来で大量の失業、ハイテク企業のレイオフ、タワマン建設中断、企業倒産によって街はホームレスとゴミだらけとなった。全家庭の収入はおよそ半減した。


最後はババ抜きゲームとなっていたのに中間層がなぜマンションを購入したかといえば、中国人は土壇場で賭け事に興じるという特性による。


五ケ年計画は「壁新聞をみているようだ」と中国人エコノミストが印象を語ったが、具体的な解決策は提示されず、おどろくことに数値目標もなかった。修辞にはあきあきしているとはいえ、これは習近平が経済的苦況を自らの痛みとは認識していないからである。


JPモルガンが分析した。「刺激薬をうちすぎて中国経済には効く薬はなくなった。やっていることは骨折しているのに患部にバンドエイドを貼っている」。


となれば残る延命薬とは何か。


それは紙幣の増刷でしかないが、それは必然的にハイパーインフレをもたらす。中国経済の自滅を早めることになる。


しかし残された選択は輪転機を廻すことしかない!


▼架空のものがたりだった中産階級の台頭


中国の歴史を振り返れば皇帝眷属とボディガードが特権階級、ほかは奴隷である。古代社会の構造がそのまま生き延びており、主として海外企業の進出によって誕生した中産階級は外国企業の撤退と伴に消滅した。改革開放政策で登場し、躍進した「中産階級」とは架空の物語だったことになる。


七つのアングルからこの問題を掘り下げよう


第一に不動産不況は史上空前の大暴落をもたらし、碧桂園、恒大集団、万科というトップから三位までの不動産デベロッパーが事実上倒産し、GDPの30%を占めた不動産業界が壊滅している。日本で言うと三菱地所、三井不動産、住友不動産と清水建設、鹿島建設、大林組が一斉にデフォルトをやらかしたような規模なのである。


にもかかわらず嘘の統計発表により中国経済はまだまだと中国共産党と同じことを唱えている西側のメディア、エコノミスト、シンクタンクがある。


パンダも日本からいなくなるのに中国に未練たらたらが経団連、中国経済のマイナス面をオブラードで包み込んだ報道しかしない日本経済新聞(かの親中派だった『フィナンシャル・タイムズ』も立場を変え「中国経済は最悪」と言い出した)


筆者がTIMEのグラビア報道で、内蒙古省オルダスに百万都市をつくったが住民が居ないという特ダネ記事を読んで、すぐに現場に取材に行った。十五年以上前のことだった。

幽霊タワマン、市役所前の巨大なオブジェ。ホテル前の駐車場には中国各地から“見物人”の車両がズラリ。こんなことをやっていたらどうなるのか、中国人だけでなく、深刻な懸念が拡がるが、需給関係を無視しての不動産開発に狂奔した。筆者は「中国経済は破綻しますよ」と警告しつづけてきたが、中国礼賛派からは馬鹿扱いで批判されるし、メディアは筆者らの主張を撤退的に無視した。しかし当時の朱容基首相は批判していたのだ。「ハコモノばかりつくってどうするんだ」


六年前だったか、習近平もバブル絶頂のときに言った。「マンションとは人が住むための住居です」。


第二に習近平には末端からの叫び声が聞こえないらしい。


賃金不払い、最近の労働争議は「残業時間をふやせ」がスローガンである。生活困窮者の多くは元中間層、現在は無職から給与半減組だ。


湖南省の花火業者は『規則が変わったから花火を売るな』(役人の賄賂稼ぎの口実)と言われ親戚からカネをかき集めた仕入れがむだになりそうと小役人に賄賂をおくりつづけた。しかし、方策虚しく、ついに倒産、ライブで自殺現場を中継しながら副市長の愛人の存在や賄賂をうけとった小役人の名前をばらし花火とともに自爆した。


このような悲劇は中国全土でつづいている。経営者の自殺があとをたたない。庶民は絶望の底にあり、這い上がろうにも、雇用はなく、監視が厳しくて抗議行動もとれない。中国社会全体を蔽う雰囲気は虚無感である。


ところが習近平は、国民の経済的困窮に関心がないのだ。かれの関心は毛沢東時代に戻り、共産党独裁を守ること、経済が苦境に追い散っても党がしっかりと軍を掌握していれば、独裁権力はゆるがない。


毛沢東は国民が飢えてばたばた餓死していても、農作物を海外へ売り、周恩来は「国民はパンツ一枚になっても核兵器開発を続ける」と絶叫していた。


当時、中国の情報は閉ざされており、国内長距離電話は軍用の回線しかなかった。海外の消息は聞かれず井戸のなかの蛙だった国民は全体主義の恐怖政治にふるえるだけだった。


現在、経済方面の情報操作はハイテク競争での中国の躍進ばかりを伝えて居る。


中国メディアは「AI競争でアメリカに追いついた、ロボットでは米国に四年の差をつけた。中国新興のディープシークは米国シリコンバレーを青ざめさせた」という記事のオンパレード。偏向報道ばかりである。


だが、国民はチャイナドリームがもう存在しないことを知っている。ネットの情報空間は党の宣伝を信じなくなった。


▼「いずれ市況は回復する」と思い込んでローンを支払いつづけた人びともついに債権放棄、銀行の差し押さえ物件は200万戸以上


第三に不動産ブームが終わればデベロッパーも下請けも倒産するが、最悪の被害はローンで物件を購入した中間層だ。理財商品からP2Pまで、株のインサイダー取引にせよ騙されて財産を失った多くが、この中間層なのである。


いずれ市況は回復すると信じてローンを支払いつづけたが遂に不払い、債権放棄が続出。銀行が差し押さえた物件は200万戸をかるく越える。


直近のUBS(ユニオン・バンク・オブ・スイスランド)は、「中国本土の不動産価格の下落と経済の弱体化により、ローン不履行が増加し、差し押さえ住宅がさらに増え、長年の不況がさらに長引く可能性がある」と予測する報告書をだした。


中国との取引あるだけに、随分と遠慮した物言いで、銀行が中小企業から差し押さえるマンションの数は2027年までに240万戸を超える可能性があるとした。実態はこの10倍だろうと推定される。なにしろ人の住んでいないマンションが1億3000万戸もあるのだ。


話は至って単純なのである。


ローンを組んだが、収入が減ってローン返済の延期、猶予を申し出るか、夜逃げ。自動的に銀行の担保となる。自己破産を申請すると中国では海外旅行どころか新幹線にも乗れないこととなる。たとえば8000万円で不動産を購入し、頭金をしはらい、これまでに4000万円を返済してきた。のこり4000万円だが、物件をたたき売って身軽になりたいと考えても、当該物件は3000万円以下に下落していた。ローンの残高に金利が加わる。これじゃ何のための人生だったのか。


銀行は貸しはがしに狂奔し、銀行に借金する民間企業は極小。こつこつ貯めた小金は換物投機か、海外の不動産購入となる。


生産の縮小はマインドを萎縮させる。民間企業の設備投資が乏しくなった。そのうえ海外企業の撤退が続く。


ピーク時に中国当局が豪語したところに依れば中間層は四億人いた。現在1億5000万人が生活困窮者と分類され、中産階級からはじかれたという。


では中国における中産階級とは、「不動産(不良物件などの区別はない)を持ち、多少の貯蓄ある階級」であり、世帯あたりの所得が邦貨換算で200万円から1000万円(ひとりあたりのGDPではない)。「ネット通販で物資を注文し、スマホの買い換えが出来る階層だ」とする。年収750万から1500万円は中産階級の上のクラスという。


▼地方政府は歳入減の土地売買収益がなくなった


第四に土地売却によって成立してきた地方政府の歳入は悪化し続けており、その債務がいまや3000兆円を越えて、地方公務員は給与不払いが何ヶ月も続いている(一年前の拙著の予測は1800兆円だったから、わずか一年で借金額は膨張していたことになる)。


11月に中国当局は不動産下落率や土地売却データの公表をやめた。かつてもGDPや失業率の公表をやめたことがあったが再開後の数字は全てがでっち上げだった。


本当の数字を知ったら、多くは卒倒するかも知れない。


収入が激減したが、反比例して社会保障分担金、医療費負担は急増、いや激増している。健康保険基金を食いつぶし、いずれ年金精度は崩壊する。


そもそも共産主義国家とはゆりかごから墓場まで政府が面倒を見るユートピアではなかったのか。そして、習近平はこの方面の関心も薄いのである。しょせん、毛沢東を理想とする彼には国民は奴隷という認識なのである。


第五にどうせ儲けても共産党に吸い上げられるか、虐められる(アリババはアントの上場を断念させられたように)、民間企業は完全にやる気を失った。習近平の政策が悉く失敗したのだ。


これが若者の失業という最悪最大の問題を惹起したのだ。


一時間のアルバイトでも収入があったとされ、失業にカウントされない。大卒の卒業証書は雇用証明が必要なので偽造書類でごまかす。これだけのトリックを講じても若者の失業率は公式的に21%、実態は60%以上だろう。多くは『中国の時代は終わった』と認識している。


『中国共産党の正統性』には懐疑論が沸騰する。そもそも共産党は抗日戦争を闘った主体ではなかった。『党の指導がつねにただしかった』とする政治宣伝は洗脳効果を喪失した。「党の主導は一貫して間違っていたという認識の交替がまもなく起こるだろう。


すり替えようとした抗日、日本への罵詈雑言も世論にはならず、レクサスは売り切れ。日本の寿司チェーンの新規開店にはなんと十四時間待ちとういう長蛇の列ができた。


かくして若者たちの失望感は絶望につながる。中国共産党への憎しみはますばかりである。


第六に政治への決定的な不信である。


外交部でも秦剛失脚後、後継といわれた劉健超が失脚した。胡麻擂りの天才芸人王毅然だけが生き残っている。


親米派、親米派の外交官は習近平が戦狼外交路線に切り替えてから邪魔になったという分析もあるが、自分が抜擢した人事を自ら否定するのだからその意地悪な、不気味な遣り方は、人格破綻者とみられる。

習近平の病的なほど猜疑心の強さは崇禎帝そっくりである。


外交部長就任確実を言われた劉健超は、渡米したおりブリンケン国務長官に「中国は(米国が構築した)国際秩序をまもる」と言明したことが習の怒りを買ったというが、真相は分からない。


軍も高官たちが次々と失脚した。しかも全員が習近平が抜擢してきた人物ばかり。わけても苗華は台湾侵略のときの将軍になるはずだったから、この政権が末期症状、習近平が重病という健康不安説が飛び交うのだが、病気が重いトナルト指導者は心理状態も悪化し、独裁者の監視体制は側近すらをパニックに陥れる。毛沢東、スターリンも末期がそうであったように誰もが「次は自分かも知れない」と強烈なトラウムに心理が疲弊する。軍にとっては台湾侵略どころでではない。


第七が「AIバッハ」とういう問題である。


比喩的な修辞に聞こえるかもしれない。イスラエルの調査会社「ディーザー」と「イプソス」によれば、音楽を聴いた97%が人工知能が生成した曲と人間が作曲した曲を区別できなかったことが判明した。チャットGPTでつくった小説が、あるいは論文が賞を獲得する時代だから驚くに値しないが、産業界にとってはAIが音楽の制作、消費、収益化を一変させる懸念が高まった。


なにしろ数秒で新曲を生成できるAIツールは著作権の侵害になるのか、作曲料を誰に支払うのか、アーティストの生活を脅かすというのは世界の音楽業界が倫理的、経済に新しい、しかも深刻な状況をもたらした。すでにハリウッドでもAIが有名声優の声を模写しており、声優らは失業の懼れを抱く。囲碁将棋、チェスではAIが名人を破っている。中国のロボットには名筆家や料理ロボットも登場しているが、AIロボットの北京ダック店、AI政治家も誕生しそう。


イスラエルの「テンザイ」社は軍事技術から出発した新興企業だが、AI研究およびセキュリティチームの拡大、自律攻撃能力の強化、金融サービス、ヘルスケア、テクノロジー分野に進出し、注目を集めている。ネットワークの脆弱性からソフトウェアを守るサイバーセキュリティ新潮流の最前線に立っていると評価されている。


日本ではアサヒビール、アスクルなどが深刻は被害を受けたように、とくにAIのスピードの加速が顕著となった。こうした脆弱性を自律的にハッキング、悪用、修正するエージェント型AI侵入テストシステムを導入、テンザイのシステムでは継続的稼働の攻撃能力を提供し、アメリカにはないビジネスモデル。暗号解読などではイスラエルの技術は世界一の水準にある。


何を言いたいか。つまり中国のハイテク模造品はAIバッハなのである。空母の凄まじき劣勢、飛ぶかどうか分からないミサイル。すぐに探知される中国海軍潜水艦。生成AI、チャットGPTで成立するのが中国の工業社会の実態である。


ともかく習近平の中国は革命前夜である。


つぎの革命は広場からはおこらない。家庭の食卓からおこる。ロシア革命は「パン寄越せ」から始まったように。


人びとが暮らしをドン底に陥落し、食べられなくなったとき、歴史の法則では「革命が必然的におこる」


日本の最大の懸念は、そのときに日本に押し寄せる中国難民が数百万人を超えるだろうが、彼らをどう扱うのか? だれもこの恐怖のシナリオに回答を出そうとはしない。