東アジア歴史文化研究会のブログ

日本人の素晴らしい伝統と文化を再発見しよう

習近平の薄気味悪い笑顔を心の底で嗤いながらディープシーク、アリババ、バイトダンス、テンセントなど創業者たちは出席、習近平からお褒めの言葉を預かった。(宮崎正弘国際情勢)

東アジア歴史文化研究会

3月22日、北京で中国発展フォーラムが開幕した。四中全会ならびに全人代で承認された第15次5か年計画の実践ショーケースとして、中国共産党にとって、外資の呼び込みは必須の政治課題である。

だが出席者リストに日本企業が確認されなかった。日本の経済界が中国市場に対して抱く警戒感と距離感が明確になった。「さようなら、北京」なのだ。

さて最長老だった宋平の葬儀は3月10日に開催され、習近平以下政治局常務委員七名全員参列した。宋平の享年は108歳。最長老の元老、政治局常務委員を務めた。

党幹部の墓苑がならぶ八宝山革命公墓で火葬に付された。習近平、李強、趙楽際、王滬寧、蔡奇、丁薛祥、李希、韓正らが別れを告げた。胡錦濤、温家宝ら、宋平に繋がる直系の改革派からは誰も出席しなかった(というより出席を許されなかった)

宋平は周恩来の秘書をつとめた関係で、党内で不同の位置を占めていた。胡錦濤、温家宝らを幹部に引き揚げたのも彼である。これで習近平に正面から諫言できる“うるさ型”は不在となり習近平は祝杯を挙げたに違いなし。

アリババ、バイトダンス、テンセントなど中国の先進的企業も、共産党の監視下にはいり、自由な企業活動も社債の起債も、外国への株式上場も中国共産党の顔色を伺わなければならなくなった。

というより党の意向から外れると、CEOは逮捕される危険性ばかりか、法外な罰金を召し上げられる。換言すれば“がんじがらめの規制”に縛られるから「自由奔放な発明など、ばからしく遣っておられるか!」となる。

独創的特許は米国でダミーを設立して登録し、アメリか企業の振りをして知財収入を上げる方がよほど賢い遣り方となる。

他方、中国政府は力点をおく産業に対しては巨額の補助金をつける。このため、各社は、政治的指示を受ける前に、自社のビジネスモデルを国家主導の戦略目標に先回りして合わせる「積極的な連携」を推進するようになった。いかにも中国人らしい多重人格人生である。

とくに台頭する人工知能(AI)のグループは、「政策ネイティブ」なアーキテクチャを採用し、政治的リスクを避け、利益最大化よりも国家との連携を優先している。この点でリアリストとである。

2025年2月、習近平国家主席は6人の大手テクノロジー企業CEOを招いて民間企業シンポジウムを開催し、ついでに「民間経済促進法」なるものを公布した。

習近平の薄気味悪い笑顔を心の底で嗤いながらディープシーク、アリババ、バイトダンス、テンセントなど創業者たちは出席、習近平からお褒めの言葉を預かった。

共産党との連携の齟齬が壊滅的な損失を招くことを認識しつつも中国ビッグテックの企業らは国家との連携を優先するメカニズムに参画することとなった。

▼従わなければ潰すだけさ

中国ビッグテックは中国共産党との戦いで苦杯をなめてきた。

ライドシェア企業「滴々」(Didi )が2021年6月にニューヨーク証券取引所への上場を決定したところ、中国政府は同社に12億ドルの罰金を科した(BBC、2022年7月20日)。当局はDidiの行為を「従順を装いながら反対の行動をとる」と非難した。

2020年末にアリババが金融子会社のアント・グループの二重上場を強引に推し進めたことで、国家による上場停止命令が出されたうえ、27億ドルの罰金が科せられた。アリババのジャックマーは三年ほど世界放浪の旅に出た。日本では孫正義の別荘を拠点に近畿大学のマグロ養殖場などを見学したものだった。

こうした経緯から「オープンAI中国版」とは言える「ディープシーク」は設立以来、一貫して中国共産との政策に沿った形で事業を展開してきた。ヘッジファンド「幻方量化」傘下で設立された同社は、AI開発者と金融を分離し、投機資本から距離を置く体制の下で事業を運営している。

「智譜華章科技」(Zhipu AI)は半導体の「カンブリコン」やムーアスレッドなど新興の国営半導体メーカーとの互換性を確保することで対応した。 

例外とみられていたEV分野も例外ではなかった。


テスラを販売台数で抜き去ったBYDも絶頂を終えて劇的な衰退期を迎えた。

もともと電池メーカーとして出発したBYDはイノベーションによって新製品の電池が馬鹿売れし、西安汽車(自動車)を買収、自動車製造に乗り出した。

注目したのは世界一の投資家ウォーレンバフェットだった。豊富な運転資金、開発資金を得たBYDは内燃機関のクルマからプラグインハイブリッドに挑戦し、波に乗ってコロナ禍でも劇的な後退はなかった

2024年テスラを抜いて世界位置の座を確保したが、その前にバフェットはBYD全株を売却していた。
バフェットの判断は利益の継続性であり、中国のEV業界が政府の補助金などで過当競争に突入すれば、いずれダンピング、赤字輸出となり、利益確保は難しいだろうと判断したのだ。まさにバフェットの予見力はさえていた。

▼市場は凍り付いていた

BYDが象徴する中国EVは危機的状況に直面した。売り上げが40%も急落し、EV市場は過剰在庫を抱えて、多くのメーカーが倒産した。

なにしろレストラン、家庭的飲食店、喫茶店、ミルクティーなどは毎年300万点が閉店し、理髪店から美容院はては音楽学校まで閉鎖する未曾有の不況である。

BYDの思惑はなぜ外れたか?

第一に新興のNIO、小米、吉利が格安EVを投入し、しかもスマホと連動する新時代の電子連動型ゆえに消費者の人気を捉えたがBYDは流向に追いつけなかった。

第二に輸出先を狙った米国は中国製EVに100%、EUは45%関税をかけ、市場参入が事実上不可能となった。

第三にBYDは零下20度でも700キロの走行可能な新型バッテリーを投入し、中国全土2万箇所に充電ステーションを設置するなど未来構想を発表して巻き返しに出るが、小米などは200万円の低価格で勝負に出た。あまつさえ中国の未曾有の不況で消費者の財布が固く閉じられ、市場が凍結していた。

こうして中国のテクノロジー分野における積極的な連携は、経済・技術資源に対する国家統制の下で成立する。民間テクノロジー企業は、中央の指示に従うことで、より有利な資源配分を確保していることになる。

ということは今後の発展は期待できない。EVも風力発電も太陽光パネルも政府補助金が切れたらすぐさま多くの類似企業が破綻したように。