米軍、とりわけ特殊部隊によるマドゥロ大統領拘束作戦は、台湾海峡と台湾東側海域で行われた人民解放軍の軍事演習で台湾指導部を標的にする軍事作戦能力を誇示したばかりの中国にとっては衝撃だった。
米陸軍「デルタフォース」(特殊任務部隊)が拘束作戦を実行したが、高い精度と最小限の犠牲者という「教科書通りの攻撃」だった。
「作戦は首都カラカスの広範囲を停電させるためのサイバー攻撃から始まった。米軍の軍用機が暗闇の中でベネズエラ側に気づかれずに接近するためだ。3日未明、陸上と海上の20か所から飛び立った海兵隊や海空軍などの軍用機がベネズエラのレーダー基地などを攻撃し、爆発音が響き渡った。同じ頃、特殊部隊を乗せたヘリコプターがマドゥロ氏の邸宅に到着した。この間、最新鋭のステルス戦闘機F35などが上空からヘリを護衛した」(「読売新聞」1月5日)。
マドゥロ拘束を担ったのは、「デルタフォース」と、2011年のウサマ・ビンラディン襲撃作戦を実行した第160特殊作戦航空連隊(「ナイトストーカーズ」)だ。
作戦は天候の回復を待ったため、四日遅れとなった。たまたま中国の使節団がカラカス滞在と重なった。なお中国代表団を率いたのは王毅外相という説が流れているが、中国代表は局長クラスだった。航空路が遮断されているため、かれらはカラカスに残留したままである。
王毅外相は北京にあって、4日に緊急に招集した外交部会議を主催し、米国の軍事作戦に反対と述べるに留めた。
ルビオ国務長官は、「米国がベネズエラを統治するのではなく、暫定指導部に圧力をかけるため、一部の石油輸出に対する軍の「隔離措置」は継続される」と述べた。
つまりレジュームチェンジが目的ではなかったことになる。
「これはベネズエラ独裁政権のおわりではなく、あらたなる混沌のはじまりである」と『フォーリンアフェアーズ』(電子版、1月4日)は批判した。
トランプの狙いは石油戦略と濃厚に絡む。ベネズエラは世界最大の確認済み石油埋蔵量を持つ。今後、米国石油資本によって設備が更新され、メジャーの実効支配が強まり、世界の石油市場が再編される可能性がでてきた。
さて中国の対ベネズエラ投資は累計で620億ドルと推定される。
石油による返済がなされており、25年10月時点での中国の債権残高は230億ドルとされる。
仕組みは中国とベネズエラのジョイント企業を通じ、ベネズエラ国有企業のPDVSAが石油を輸出する。中国国有のCNPCの子会社CHIOILが「コレクション・アカウント(集金口座)」といわれるドル建ての銀行口座に入金し、決済は完了する。ところが2019年、バイデン政権はPDVSA口座を凍結した。
原油相場は好況に沸いた1バーレル=100ドル時代から、価格が激減し、また日量350万バーレルの出荷も、現在は日量80万バーレルあるか、ないかと状態となった。設備老朽化が主因である。
1月4日、OPECプラス(サウジアラビア、ロシア、イラク、アラブ首長国連邦、クウェート、カザフスタン、アルジェリア、オマーンなど)は世界の市場状況と見通しを検討した。
「安定した世界経済の見通しと健全な石油市場のもと、安定への取り組み」を再確認した。
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