習近平の頭の中は2027年台湾侵攻ではなく2024年だった 張又侠副主席らが阻止したため両者に亀裂、かれらの失脚に繋がった(宮崎正弘国際情勢)
日本ではまったく注目されなかった。
台湾の有力紙『自由時報』(2026年3月9日号)が森本敏・元防衛大臣に独占インタビューを行ったのだが、現職ではない。しかも随分前の防衛庁長官だったから、ニュースバリューが薄いと判断されたからだ。
ところが、森本発言に注目したのが中華圏のメディアだった。中国語圏ではネット空間で大きな問題となっている。
かれは何を発言していたのか。
「中国は台湾に対する武力行使を放棄していない。中央軍事委員会副主席の張又侠氏の失脚により、習近平国家主席が武力を用いて台湾を統一する可能性は、みしろ高まった」
森本敏元防衛大臣は「シナリオは2つ。第一は軍高官粛清と人事異動により、反習勢力がほぼ排除され、習主席の指揮権がさらに強化され、武力行使が容易になるシナリオだ。
第二に政治、経済、情報といった武力以外の様々な手段を用いて統一を目指すというシナリオ。もし後者のようにすすめば、2028年の台湾総統選挙が重要な転換点となるだろう」とした。
森本敏元大臣は、「2024年の中国共産党第19期中央委員会第3回全体会議後、習近平氏は台湾への軍事攻撃を検討していた。ところが張又侠副主席らが阻止し最終的に失敗に終わった。習近平氏が人民解放軍に対し、いつでも行動を起こせるよう必要な準備をすべて完了するよう指示していた」
つまり西側情報筋の分析では2027年が台湾侵攻の可能性が高いと想定されていたのだから、習近平は、西側分析より、もっと早い段階(24年から25年にかけて)で、事侵攻を試みようとしていたことを意味する。
多くのチャイナウォッチャーは、武力行使の可能性を軍事能力、武器バランス比較、西側の反撃力などを勘案して経済コストをはかり、台湾侵攻となれば中国軍も莫大な犠牲を伴い、非効率的で、失敗のリスクも高いとし、武力による統一を優先しない可能性がある、とみている。
だが、“第二の毛沢東”を自認し「中華民族の復興」というパラノイア的強迫観念に取り憑かれた習近平にとって、武力準備と、兵站の進捗、経済コストとかは二の次であり、政治目標の達成が優先されるのだ。
トウ小平がベトナムに無謀な戦争を仕掛けて軍権一本化に成功したように、習近平にとっては勝っても負けても構わない。軍権の掌握が重要なのである。
したがって台湾侵攻を時期尚早と反対した張又侠や劉震立を排除し、軍権を独り占めすることを前々から狙っていたということになる。いま、たしかに中国には習近平に刃向かう政治カも軍人もいない。
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