北野幸伯『新版・中国に勝つ日本の大戦略』(育鵬社) 尖閣、沖縄を侵略国家チャイナから守り抜き、しかも戦闘を回避する 日本の大戦略は米・露、そして中国、印度の研究が重要だ
独自の視点と切り口の斬新さから世界情勢を解析する北野氏は経歴もユニークである。ソ連崩壊を目撃しつつロシアに滞在すること十八年、西側メディアの報道に現れた偏光プリズムを是正する視力、観察力と洞察力が養われた。
つまり西側のメディアだけを情報源に世界情勢をかたるヒョウロンカが多い中で、氏は西側メディアの報道偏向、そのキリスト教を基礎にしながらもアンチ宗教というディレンマ、その治療の見込みのないグローバリズム思想が偽善であり、例えば「プーチンは悪、ゼレンスキー大統領が善」という二元的価値観の欺瞞。ロシアや東欧からみると世界はどうみえるのかという複眼的なものの見方に力点を絞る。
安倍晋三首相は国民に約束した靖国神社参拝が出来なかった。
「反対しているのは中国と韓国だ」とおもっていたら中国の秘密宣伝工作によって世界中で靖国神社参拝は日本の軍国主義復活だとする巧妙な逆宣伝が北京によって成されていて、日本は宣伝戦争でみごとに敗北したのだ。
経過を調べると1970年代に尖閣諸島海域に膨大な資源の埋蔵がわかり、突如として中国は「尖閣は歴史的に中国領土だった」と言い出した。
ついで外国首脳との会見で習近平は『歴史問題』を持ち出して、日本の軍国主義の復活が尖閣国有化の原因だとする非論理的な物言いを声高に叫びだした。裏では「反日統一共同戦線」の暗躍があった。
これは中国の国策なのである。
統一戦線工作部は「毎週、北京の密室で会合をもち、宣伝の戦術やメッセージを作成した。作戦の一部門だけでも千名の職員をかかえ、年間予算が120億ドル(邦貨換算で1兆8000億円)を費やしている」と嘗てパンダハガーとして有名だったがアンチチャイナに転向したピルスベリーが指摘した。
これだけの予算と人員を割いて反日統一共同戦線という巧妙な宣伝戦争が展開されたわけで、気がつけばオバマ政権までが安倍首相の靖国参拝に介入した。
この安倍包囲網ともいうべき反日工作に囲まれて安倍総理は中国の罠にはまった。
ところがロシアがクリミアを占領したことで、中国の宣伝戦争も失敗した。
「2012年12月、総理大臣に返り咲いた安倍晋三首相は、「反日統一共同戦線戦略」で日本を破滅する中国と闘ってきました。しかし、2018年10月、第二次日中戦争は終わり、今度は米中覇権戦争がはじまったのです。安倍総理が中国に完全勝利した瞬間でした」(168p)と独特な分析である。
そしてバイデンもまたパンダハガーだったが、米中覇権戦争を継続し、人権で批判しハイテク供与を禁止し、周辺国に対中警戒を説き、民主サミットを開催した。あの熱烈なパンダハガーすら対中包囲網形成の牽引者に変貌していた。それだけ中国の競争力と軍事大国化がアメリカにとって耐えられない脅威となったからだ。
情勢の変化に日本外交も劇的に変わった。
高市首相は習近平との会談で「歴史問題」を提議されても無視し、「”いま”を話しましょう」としてウイグルにおける人権弾圧などを口にしたため習近平は蒼白となってトイレに二分間たったほどだった。
日本から反論を受けるなぞ想定していなかった。まして女性政治家から言われること自体が中国人政治家にとっては屈辱なのだ。日中冷戦は、習近平が感情的なわだかまりをいだいている限り続くだろう。
時代は変わったのだ。
露西亜通の北野氏は「真の同盟国がいないプーチン」と断定し、また「同盟を軽視するトランプ」と対照的な比較をする。
一方で“復活する日本”が次になにをすれば中国に勝てるかを最後に説いている。
“失われた三十年”の元凶達たちを選挙は退場させた。これからの日本は「減税路線」と「積極財政路線」であるとし、「経済成長の国に戻ることが不可欠です」(249p)と結語する。
る。
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